子どもの頃は何ともなかったのに、大人になってから自分の不器用さや生活のしづらさに気付く人は決して少なくありません。いわゆる“大人の発達障害”は、現代において増加傾向です。研究により、その原因や発症するメカニズムの範疇は、遺伝学や心理学から神経科学へと見方も変わってきています。脳腸相関の概念が浸透しつつある昨今、腸内細菌が脳やストレス反応に関わる仕組みも徐々に分かってきました。ここでは、発達障害の基礎知識と最近の知見、信頼できる情報源から発症のメカニズム、腸内細菌との関連性と注目を集めるFMT(腸内細菌叢移植療法)について紹介します。
発達障害とは?知っておきたい知識と検索サイト
発達障害とは、生まれつきの脳の機能的な問題によって生じる障害の総称です。そのほとんどが就学前の年齢で発症し、個人的あるいは社会的に学業や職業など様々な環境で、機能障害が起こることを特徴としています。まずは、発達障害に関する基礎知識から、信頼できる情報源、最近の知見を含めた発症の原因などについて押さえておきましょう。
“大人の発達障害”も増加中の実態
2022年12月に実施された厚生労働省の「生活のしづらさなどに関する調査」によると、医師から発達障害と診断された人数の推計は87万2,000人で、前回(2016年)の調査報告と比べると約1.8倍に増加しました。その背景には、2005年に発達障害者支援法が施行されて以降、全国で大人(成人期)の発達障害者における相談数が増え続けているという実態もあります。
全国にある91ヶ所の発達障害者支援センターを対象に実施された2017年の調査では、18歳以上の人で初めて相談に訪れた人(年齢不詳を除く計1,195名)のうち、もっとも多かった年齢は20歳から24歳で、全体の約4分の1を占めていました。年齢が上がるごとにその人数は減っていき、40歳から44歳においては18歳から19歳と同じくらい。一方で、65歳を超えてから初めて相談に訪れる人も一定数いました。
この調査では半数くらいの人たちが、それまでに発達障害※の診断を受けています。その初めて診断された時期は20代が36.3%と他の世代よりも顕著に多く、次いで30代が16.9%、40歳以上が11.6%でした。つまり、半数以上の人が20歳を超えてから初めて診断を受けているということです。このような実態は、ヒトが生涯をかけて精神面で発達し続けていることを映し出しているとも言えるのでしょう。
※ここでは発達障害のうち、ASD、ADHD、LDの3つについて調査しています。
発達障害の定義と法改正の趣旨
発達障害の定義は、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」です。
これに対し、いわゆる“大人の発達障害”は、子どものときに受けられたはずの診断やその支援を、何らかの理由で逃した人たちとは限りません。人によっては、子どものときは対人的なコミュニケーションに関するトラブルもなく、問題を起こすような不注意の頻度も少なかったために、この障害の存在に周囲が気付けなかったというケースもあるでしょう。これが大人になってから、社会人として求められる作業に脳の処理機能が対処できず、職場でのトラブルやうつ、ひきこもりになってから気付くということも少なくありません。
2016年に改正された発達障害者支援法では、これまでの発達障害の定義に「社会的障壁」に関する文言が追記されました。この「社会的障壁」とは、発達障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものを指します。注意したいのは、知的障害の有無によって決められるものではないという点です。この改正により、大人になっても「切れ目のない支援」や「就労の支援」といった、成人期における発達障害の支援に対する項目が大幅に追加されました。
発達障害の種類とその特性
発達障害とは複数ある症候群の総称で、国際的な診断基準※(米国精神医学会のDSM-5、WHOのICD-11)では以下7つの発達期に始まる認知、社会性、運動などの機能不全を特徴とする症候群を含むとされています。
※国際的な診断基準:
・DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)は米国精神医学会が作成している、精神疾患の診断基準あるいは診断分類。
・ICD-11(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems、疾病及び関連保健問題の国際統計分類 第11版)は世界保健機関(WHO)が作成した疾病、障害、死因に関する統計分類で、現在は2019年に発表された第11版が用いられている。
【発達障害に含まれる7つの症候群】参考:厚生労働省「発達障害ガイドライン」
・知的障害能力障害群 (いわゆる知的障害)
・コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群 (いわゆる言語障害)
・自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(略称ASD)
・注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(略称ADHD)
・限局性学習症/限局性学習障害 (略称LD)
・運動症群/運動障害群
・その他の神経発達障害
なかでも、代表的な症候群の4種類とそれぞれの特性については次に示す通りです。これらの特性は、環境との相互作用によって欠点になることもあれば長所になることもあり、発達障害をもつ本人だけでなくその周囲の人の理解も欠かせません。また、障害ごとの特性は複数が重なり合っている場合や、年齢や環境によって目立つ症状が変わってくることも。どの診断名かを気にすることより、その人に合った支援が何かを考えることが大切です。
種 類 | 略 称 | 代表的な特性 |
自閉症スペクトラム症 (自閉症、アスペルガー症候群を含む広汎性発達障害) | ASD (Autism Spectrum Disorder) | ・相手の表情や態度などより、目の前にある物の方に関心がつよい。 ・他の人と話していても自分のことばかり話す。 ・急な予定変更や初めての場所では不安になって動けないこともある反面、慣れた場所では誰よりも一生懸命に取り組める。 ・大勢の人がいる所や気温の変化などの感覚刺激への敏感さで苦労する。逆にそれが芸術的な才能につながることもある。 |
限局性学習障害 (学習障害) | LD (Learning Disorders) | ・「話す」「理解」は普通にできるのに、「読む」「書く」「計算する」ことが努力しているのに極端に苦手。 ・勉強や会議などでメモを取ることに気を取られて、本来の内容が分からなくなる。 |
注意欠如・多動性障害 (注意欠陥多動性障害) | ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder) | ・次々と周囲のものに関心を持ち、周囲のペースよりもエネルギッシュに様々なことに取り組むことが多い。 ・「多動性」では話が止まらなかったり、待つことが苦手でうろうろしたりする。 ・「注意力散漫」では、うっかり同じ間違いを繰り返してしまうことがある。 ・「衝動性」では約束や決まり事を守れないことや、せっかちでいらいらすることがよくある。 |
その他の発達障害 (トゥレット症候群、チック障害、吃音〈きつおん〉、選択性緘黙〈かんもく〉) | - | ・トゥレット症候群は1年以上にわたり、多種類の運動チックと1つ以上の音声チックが続くもの。 ・運動チックは、目をパチパチしたり顔をクシャッとしかめたりするなど、突然に起こる素早い運動の繰り返しが特徴。 ・音声チックは、咳払いや鼻鳴らし、奇声を発するといった、突然に起こる発声が特徴。 ・吃音は、いわゆる“どもる”話し方の障害で、その年齢に応じた流暢な話し方が困難。 |
※表は、厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」、国立障害者リハビリテーションセンター「各障害の定義」、厚生労働省 政策レポート「発達障害の理解のために」を参考に作成。
発達障害に対する誤解と、信頼できる情報源
発達障害について、「先天的なハンディキャップだから発達できない」というのは誤解です。個人差はあるものの、成長とともに改善されていく課題も多くあります。「障害だから治らない」という先入観を持つことなく、発達の仕方に生まれつき凹凸があるということを周囲も理解し、その人にあったサポートをしていくことが重要です。
一方で、よかれと思って支援する手段や方法が、本人にとって逆につらい思いをさせている可能性もあります。「すべて本人の好き勝手にさせておく」や「有名な訓練方法を取り入れれば、それだけで治る」というのも誤解のひとつです。
また、以前は知的な遅れを伴わない症候群に対し、「知的障害が軽度である」という意味で「軽度発達障害」と呼ぶ時期もありました。しかし、知的な遅れがなくても他の部分で大変な困難を抱えている人もいます。そのため2007年に、障害そのものが軽度であるといった誤解を招く恐れのある「軽度発達障害」という言葉は、原則として使用しない旨の通達が文部科学省から出されました。 ヒトは障害があってもなくても、そのときの時代背景や社会状況など多様な外的要因に影響を受けながら、一生かけて発達していく生き物です。これらを踏まえ、一人ひとりが信頼できる情報源から最新の知識を身に着けておくことは、多様性のある社会の実現に向けて大きな力となるでしょう。
【発達障害に関する相談窓口や情報サイト】
・発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター):https://www.rehab.go.jp/ddis/
・「全国の相談窓口一覧」発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター):https://www.rehab.go.jp/ddis/action/center/
・発達障害ナビポータル(厚生労働省/文部科学省ほか):https://hattatsu.go.jp/
・発達障害教育推進センター(独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所):https://cpedd.nise.go.jp/
1歳6か月までの子どもでASDを確認する方法
日本では早い段階でASDの兆候に気付くことを重点課題に掲げ、「健やか親子21」第2次計画(平成27~36年度)において、子どもの社会性に関する発達過程を把握するための、具体的な定型発達児(発達障害のない子ども)の行動内容について挙げています。年齢ごとで次に挙げるような行動が「ほとんど見られない」場合に問題があるとされ、地域保健の専門家はもちろん、子どもを育てる親も押さえておきたい確認の方法です。
年 齢 | 通常は出現している社会性に関する行動 |
1歳まで | ・アイコンタクト ・きょうだい以外の他の子どもに対する関心 ・微笑み返し ・呼名反応 ・人見知り |
1歳6ヶ月まで | ・興味の指さし ・指さし追従(大人の指さしを目で追って対象物を見た後に大人の顔を見る) ・視線追従(大人の視線を追って対象物を見た後に大人の顔を見る) ・興味のあるものを見てほしい大人に見せに持ってくる ・身ぶりがなくても言われた指示を言語だけで理解する ・身近な大人の動作や言語の模倣(もほう、いわゆる“まね”) |
発達障害の原因は「遺伝」より「環境」が大きい
様々な研究によって発達障害の原因は、その人の遺伝要因よりも環境要因の方が主な原因となることが確定的となってきました。ここで自閉症の関連遺伝子(障害を起こす原因となる遺伝子ではなく、障害のなりやすさに関する遺伝子)は、最近までに500以上も発見されています。これらの遺伝子が変異し、複数が組み合わさることで自閉症の遺伝子背景は構成されるため、この変異を促す環境要因が発達障害の発症に深く関わっているという見方は必然的です。
環境要因としてはその人の栄養状態や養育環境、親の年齢、感染症、化学物質などが疑われています。とくに1950年頃から急増した農薬などによる環境化学物質の暴露は、発達障害の発症件数が増え始めた頃に先行していたという背景もあって軽視できません。
一方、母体の喫煙や受動喫煙は、子どもにADHDを起こす危険因子であることが知られています。とくに、ドパミン受容体など特定の遺伝子多型※を持つ母親が喫煙すると、その発症リスクが上昇するという疫学報告も。この報告は、遺伝子背景と環境要因の関連をつよく指し示すよい例となっています。
※遺伝子多型:全遺伝情報(ゲノム)のうち一部の情報が異なる遺伝子について、比較的多い割合(一般に人口の1%以上)で共通して見られる遺伝子の変化のことで、これ自体が病気に直結することはない。
発達障害が発症するメカニズム
これまでの知見では、どの発達障害も発症における基本的なメカニズムは同じで、脳のなかの高次機能に対応する機能神経回路が異常を起こすことで発症すると考えられています。この異常の主な原因は、機能神経回路を構成している神経回路(シナプス)※の形成がうまく出来ないことです。脳は、神経前駆細胞(ぜんくさいぼう)が分裂と増殖を幾度となく繰り返すことで、兆単位という膨大な数の神経回路を作り上げます。これが上手く形成されていないと、神経回路どうしで情報のやり取りが出来ず、結果としてその機能神経回路も本来の機能を果たすことが出来ません。
例えば、自閉症の子どもでほとんどの機能に問題がないのに、他人とのコミュニケーションは苦手といった特定の能力で不具合が生じることが多いのも、その神経回路だけに機能異常が起こっているからと説明できます。人によっては、異常を起こしている機能神経回路が子どもに対して求められる機能ではなかったために、大人になってから初めてその特定の不具合に気付くようなケースもあるでしょう。
また、これらの神経回路は外界からの刺激でより一層、影響を与え合いながら複雑に発達を続け、一生かけて更なる高次機能を獲得していきます。かつて、自閉症は遺伝率が90%以上と言われる時代もありました。しかし、2011年時点でその遺伝率は40%以下に塗り替えられ、現在では遺伝要因よりも環境要因の方がつよいという見方が一般的です。
こうした知見もあって近年では発達障害のうち、ASDとADHDの病因研究に関する分野は「遺伝学・心理学」から「神経科学」へ変化しつつあるという見方も出てきています。
※神経回路(シナプス、synapse):神経細胞間で情報を連絡し合う接合部のこと。
腸内細菌と発達障害の関連性
発達障害のなかでASDは消化器症状を伴う頻度の高いことが知られ、さらに近年では次世代シーケンサー※の技術進歩もあって、腸内細菌とASDとの関連性が注目を集めています。
※次世代シーケンサー:シーケンサーはDNAの塩基配列を解析する装置のことで、従来型よりも複数のDNA配列を一度に多く処理できるようになった精度向上型を次世代型と呼ぶ。
ASDの消化器症状、腸内細菌との関係
子どものASDにおいて、腹痛や便通異常といった消化器の不調は特徴的な身体症状のひとつで、なかでもいちばん多いのが下痢です。この消化器症状の程度はASDの重症度と相関しているという報告があり、消化器症状がつよいほど苛立ちや多動、引きこもりなどの行動障害や不安症状が多いとも言われています。
ASDの子どもの便を調べた研究では、腸上皮細胞の栄養となる短鎖脂肪酸(SCFA:short chain fatty acid)の量が顕著に少ないということが分かりました。反対に、ClostridiumやBacteroidesといった細菌の割合が多く、これらは消化器症状との関連が示されています。また、発達障害のない子どもとの比較では腸内細菌の多様性が低いことや、神経毒性のあるイソプロパノール(isopropanol)という代謝産物が多く見られるというような報告も。
そして、ASDの子どもに多く見られたRuminococcus gnavusという細菌は、腸管粘膜の主成分であるムチンを分解することで、粘膜層の腸管バリア機能※を弱めることが分かっています。その結果、バリア機能がうまく働かず、腸内細菌が血管内に入り込んでしまうことでASDの発症に寄与しているという可能性も否定できません。
※腸のバリア機能については、既存記事「腸管バリアのしくみと機能。食事と腸内細菌が大きく関与!」で詳しく説明しています。
腸内細菌の存在と脳腸相関を裏付ける研究報告
ASDによる不安行動やストレス反応の一部については、生体防御反応を構成するHPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質系、Hypothalamic-pituitary-adrenal-axis)※の機能から説明がつきます。
マウスを用いた実験で体の拘束によりストレスを負荷したとき、無菌状態にしたマウス(以降、無菌マウス)は通常の腸内細菌をもつマウス(以降、通常マウス)に比べ、ストレス反応の大きさを示すコルチコステロンの上昇が有意に亢進しました。これに対し、無菌マウスを通常の菌叢となるように操作すると、そのストレス反応は減弱。また、脳由来神経成長因子(BDNF、brain derived neurotrophic factor)濃度を脳内の海馬と前頭葉において比較すると、無菌マウスは通常マウスよりも有意に低下していました。これらの実験結果は、腸内細菌がストレスの反応性や、神経栄養因子に関わっている可能性があることを示しています。
一方、ASDのモデルマウスにヒトの常在菌の一種を与えると、自閉症の行動が観察されなくなって、消化管のバリア機能も改善しました。このとき、改善する前後で大きく変化した代謝産物についてメタボローム解析※をおこない、4EPS(4-ethylphenylsulfate)という尿毒症物質が同定されています。この4EPSを通常マウスに与えると、不安行動が引き起こされることも示されました。
これらはあくまでもマウスを対象とした研究結果で、ヒトについても同様とはかぎらないものの、腸内細菌に由来する代謝産物がASD様行動の誘導に関わることを示し、脳腸相関の研究に対し進展に寄与したということは間違いないでしょう。ただし、ASD発現の原因として腸内細菌叢を位置付けることはまだ早く、引き続き詳しい解析が必要です。
※HPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質系、Hypothalamic-pituitary-adrenal-axis)については既存記事『「副腎疲労症候群・HPA軸の機能障害」検査や受診、食生活で副腎をケアする方法』で詳しく解説しています。
※メタボローム解析:腸内細菌由来の代謝物や食事由来の化合物の機能性などについて、網羅的に計測する手法のこと。
腸内細菌叢の移植療法(FMT)とは?
腸内細菌とその代謝産物について研究成果が積まれてきたこともあり、最近では腸内細菌を移植する腸内細菌叢移植療法(FMT:fecal microbiota transplantation)がおこなわれ始めています。これは、健康なヒトの腸内細菌叢を経口または内視鏡をつかって投与する方法で、乱れた腸内細菌叢の改善を目的とした治療方法です。
既存のプロバイオティクスを用いた治療では投与できる菌の数が数種類であるのに対し,FMTでは約1,000種類におよぶ、ヒトに親和性が高い菌を一度に投与できます。これによって腸内環境そのものを新しく構築し、その結果、行動や精神症状を変え得る治療方法として期待されているのです。
現時点ではまだ確立された手順や決まった方法論(治療のためのガイドラインなど)は存在しないものの、すでに炎症性腸疾患やIBS(過敏性腸症候群)、インスリン抵抗性など、いくつかの病気でその効果が報告されています。
また、7歳から17歳で消化器症状を伴うASDの人に対し、冷凍した健康な人の腸内細菌を8週間にわたって経口的に投与したところ、便通異常や腹痛などの症状は82%改善し、コミュニケーションや社会性に関する発達年齢が1.4歳進みました。加えて、治療前に低かった腸内細菌叢の多様性と良いと言われる細菌の割合は、治療後にどちらも増加しました。さらに、この効果は治療終了後も8週間は継続したと報告されています。
FMT以外で腸内細菌叢を整える方法
FMT以外で腸内細菌叢を新しく構築する方法としては、内視鏡検査を扱う医療機関で提供される「腸内環境リセット療法」があります。これは、医療機器を用いてろ過した大量の温水で腸管内の圧力を観察しながら、安全に腸管内を洗浄する方法です。腸管粘膜の表面にすみ着く腸内細菌を一度しっかりと洗い流し、そのあとで食事療法やサプリメントの服用により腸内環境の改善を目指します。
ただし、保険適用のない自由診療にあたるため、費用や治療内容の提案は医療機関によって様々です。気になる人は事前に、その目的や現在の症状について医師と相談し、きちんと理解してから受けるようにしましょう。
まとめ
発達障害で分かっている原因は、遺伝要因として母親から受け継ぐ遺伝子や細菌、一生のあいだに環境要因からの影響を受けて変異する遺伝子など様々です。一方の腸内細菌叢は、妊娠時だけでなく出生後もその安定化を図ることが、発達障害の発症や症状の程度を軽減することにつながる可能性があります。そして、発達障害と脳腸相関に腸内細菌も関与していることが分かってきた今、ストレスフルな現代社会において、腸内細菌は今後ますます注目を集めていくことでしょう。
こうした知識も身に付けながら、自分の腸内細菌について向き合ってみてはいかがでしょうか。