2022.12.27/最終更新日 2023.05.24

“細胞再生”を身近な医療機関で受ける時代に!「幹細胞培養上清」の効果と安全性

自由診療

身近な医療機関でおこなう、「幹細胞培養上清(かんさいぼうばいようじょうせい)」をつかった美容医療について知っていますか?これは、ヒトの体内にある幹細胞がもつ自己複製能力と分化能力を利用した再生医療のひとつです。この幹細胞を培養してつくる上澄み液には細胞再活性に役立つ多くの因子が含まれ、点滴や注射などで取り入れると美肌や育毛、疲労回復、痛みの緩和などさまざまな効果が得られます。およそ20年前には皮膚の若返り効果も研究で示され、昨今では“幹細胞コスメ”なども登場。健康寿命を意識するうえでひとつの鍵をにぎる「幹細胞培養上清」について、その特徴や注意点をおさえておきましょう。

「幹細胞培養上清(ばいようじょうせい)」とは

まず、幹細胞とは同じ細胞をコピーしてつくる「自己複製能力」と、ことなる細胞に変化する「分化能力」をもつ細胞のことです。これには、消えた細胞の代わりをつくり続ける「組織幹細胞」と、ヒトの細胞ならどんな細胞もつくり出すことができる「多能性幹細胞」の2種類があります。2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥教授(京都大学)のiPS細胞は、この「多能性幹細胞」の一種です。

つづいて幹細胞培養上清(かんさいぼうばいようじょうせい)というのは、幹細胞を容器に入れて培養したあと、培養液から幹細胞を取り出して滅菌などの処理をおこない、得られる上澄み液のこと。こうして得られる上澄み液には、幹細胞が分泌した500種類にもおよぶサイトカイン(生理活性をもつタンパク質)が溶け込んでいます。その作用は、細胞そのものが活性化して成長や増殖を促す「成長因子」や、炎症をおさえる「抗炎症因子」、傷ついた神経を修正する「神経再生因子」などさまざまです。

4種類の由来(脂肪、歯髄、臍帯、骨髄)でことなる目的

幹細胞培養上清は目的に応じて、どこから採取された幹細胞を選ぶかというのも重要です。これには、「脂肪」「歯髄(しずい)」「臍帯(さいたい、へその緒)」「骨髄(こつずい)」の4種類があります。これらのうち、美容や医療で頻繁に使われているのは、ヒトの皮下脂肪から脂肪吸引によって採取した「脂肪」由来の幹細胞です。

一方、白血病などの治療のために使われているのは、へその緒のなかの血液から採取した「臍帯」由来の幹細胞。また、脊髄損傷などにともなう神経障害には、「骨髄」由来の幹細胞がよく使われています。

「幹細胞培養上清による治療」と「幹細胞治療」とのちがい

幹細胞を培養したあとの上澄み液だけをつかう「幹細胞培養上清による治療」は、幹細胞そのものを体内に投与する「幹細胞治療」とはことなります。「幹細胞治療」は脳卒中や脊髄の損傷といった治療のむずかしい場合を対象に、国の認可を受けた高度な医療体制と技術がそろった医療機関でないと受けることができません。

対して、「幹細胞培養上清による治療」は一般のクリニックで受けることができます。その効果は多岐にわたり、皮膚の若返りや疲労回復、薄毛や抜け毛の改善、免疫の維持、痛みの緩和など。最先端の再生医療を用いた、数々の研究から効果の確認されている治療方法です。

治療効果とその作用

幹細胞培養上清による治療でとくに注目を集めているのが、サイトカインにふくまれる「成長因子(細胞再生因子、グロースファクターともいう)」です。この「成長因子」は体内で特定の細胞における増殖や分化を促すことにより、美肌や育毛、脂肪燃焼、傷の治りを早めるなどの効果が期待できます。さらに傷ついた血管を再生し、炎症をおさえて修復を促すことでED(勃起障害・勃起不全)や動脈硬化に対する改善効果も。

【幹細胞培養上清にふくまれる主な因子とその効果】

bFGF (塩基性繊維芽細胞増殖因子)・コラーゲンを分泌する繊維芽細胞の増殖を促す ・組織の修復や神経を保護する ・血管内皮細胞の増殖や血管の新生を促す
EGF (上皮細胞成長因子)・皮膚細胞を新しくつくり出してシワやたるみを改善する ・新陳代謝を促して傷の治りを早める
TGF-α (トランスフォーミング成長因子)・肌の弾力に関わるコラーゲンとエラスチンの構造を強化する ・肌細胞の成長やターンオーバーを促す ・皮膚細胞を新しくつくり出してシワやたるみを改善する
PDGF (血小板由来成長因子)・傷ついた皮膚細胞の再生を促す ・コラーゲンの合成を促してシワやたるみを改善する ・育毛を促して薄毛や抜け毛を改善する
IGF-1 (インスリン様成長因子)・コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の産生を促す ・脂肪燃焼の効果を高める ・毛根を刺激して髪の毛を強くする
VEGF (血管内皮細胞増殖因子)・毛根に栄養を運んで発毛を促す ・肌にエネルギーを与えてツヤを改善する ・皮膚細胞を新しくつくり出してシワやたるみを改善する

治療方法と安全性、副作用について

幹細胞培養上清はおもに静脈への点滴のほか、治療をする部位への局所注射でおこないます。治療の目的によっては点鼻や、外用剤として塗布、呼吸をするときに吸い込んで肺などに届けるネブライザーといった手段をつかうことも。これらはいずれも、医療機関で医師によるカウンセリングなどを受けたあとにおこないます。

また、安全性の面では幹細胞治療とちがって幹細胞そのものを使用しないため、アレルギー反応やがん化のリスクは少なく、副作用もほとんどありません。ただ、点滴の場合は針を刺した部分の痛みや腫れ、内出血などが現れる可能性もあるものの、その多くは一時的なものです。

治療の回数と注意点

幹細胞培養上清による治療は、わずか1回受けただけでも効果が得られると言います。多くの場合、複数回にわたって受けることで効果も高いようです。頻度としては、1ヶ月に3~5回くらいを推奨している医療機関も。これには、治療する目的とその効果を確認する期間について、あらかじめ医師と相談したうえで決めるとよいでしょう。 ただし、この治療は医療保険が適用されないため、費用はすべて自己負担となる点に注意が必要です。その額は医療機関によって差があるものの、大体の相場は1回あたり数万円ほど。また、費用のほかにも、治療を受けたあとは献血ができなくなるという点にも注意してください。この理由は、幹細胞培養上清がヒト由来の成分であるためです。治療につかう製剤は滅菌処理をおこない、しっかりと安全性が確認されている一方で、細菌やウイルスなどの存在が完全に否定できるものではありません。

流行の「幹細胞コスメ」とのちがいは?

近年、化粧品の分野で注目を集めている「幹細胞コスメ」は、この幹細胞培養上清のはたらきで肌が本来もっている元気さをとり戻し、美肌づくりを目指すものです。ただし、流通している「幹細胞コスメ」には「ヒト」由来のほか、「動物」由来や「植物」由来であるものも。こうした「ヒト」以外のものでは、安価な変わりにアレルギー反応を起こす可能性もあり、注意が必要です。加えて、“幹細胞培養上清エキス配合”というような表現の場合は、上澄み液を薄めた濃度の低い状態で配合している可能性があります。

こうしたリスクを考えると、医療機関で受ける「幹細胞培養上清による治療」のほうがすこし割高ではあっても、安全に確かな効果を実感できる方法と言えるでしょう。

治療がおすすめのひと&受けられないひと

幹細胞培養上清による治療は性別や年齢に関わらず、幅広い悩みに対して応えることのできる治療方法です。ただし、妊娠中のひとや感染症をわずらうひとでは受けられません。

たとえば、次のような悩みや目的を持つひと、既存の対策や治療方法で満足のいく効果がないというひとは検討してみるのもおすすめです。

【治療を検討したい悩みや目的】

・若々しさをとり戻したい

・シワやたるみなどを改善して美肌を目指したい

・疲れにくい回復力がほしい

・アレルギー症状を改善したい

・抜け毛や薄毛を改善したい

・関節や手足の痛みを改善したい

・動脈硬化などの生活習慣病を改善したい いままでのエイジングケアと、まったくことなる幹細胞を用いた再生医療や再生美容がすでに始まっています。ここ数年で急速に進歩した幹細胞培養上清を試してみるのも、活き活きとした人生100年時代をおくるためには有効な手段なのかもしれません。

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