2023.01.31/最終更新日 2023.01.31

「大腸がん」の5年生存率は?早期治療のメリット&知っておきたい病気の要点

腸の病気

大腸がんは男女あわせてみると現在わが国でいちばん罹患数の多いがんで、部位別に見た死亡数でも男性では2位、女性では1位と上位を占めています(2021年)。ただし、早期治療なら完全に治すことができるのも、大腸がんにおける特徴のひとつです。その治療には内視鏡治療や手術、薬物療法、放射線治療、緩和ケアなどがあり、がんの進行度を表すステージによって選択の方法も変わってきます。ここでは、大腸がんの生存率や治療を早期におこなうメリット、患者さん自身も治療に取り組むために知っておきたい病気の要点についてまとめました。

大腸がんと、ほかのがんとのちがい

わが国の大腸がんは男女ともに40歳を超える頃から増え始め、2019年におけるその罹患数は男女あわせると1位で2018年と変わっていません。そしてその死亡数は男性では2位、女性では1位という多さです(2021年)。ただし、罹患数と死亡数が多いからといって、必ずしも生存率が低い(長く生きられない)という訳ではありません。

大腸がんはほかの消化器系のがんとちがって悪性度はそれほど高くなく、早期のがんはもちろん、進行していても9割くらいは切除できる可能性があります。また、切除したあとにがんが残っていなければ、その治癒率は7割から8割に達するとも。

注意したいのは、早期の大腸がんには自覚症状がないものがほとんどだということです。定期的ながん検診などによる早期発見と、より早い段階での治療開始が鍵となります。

生存率を正しく理解しよう

患者さんやそのご家族にとって、気になるもののひとつが「生存率」でしょう。一般によく使われるのは、がんと診断されたひとのうち5年後に生存している人の割合を指す「5年相対生存率」です。なぜ5年なのかというと、古くから“がん医療”を評価する指標のひとつとして、診断後あるいは治療後5年を経過したときの生存率が治癒の目安とされてきたからです。これに加えて最近では、科学的根拠に基づく情報をより早く提供するために、「3年生存率」も公表されています。

ただし、こうした生存率は多くのがん患者さんから得られた平均的な値であって、ひとり一人の余命を決定するものではありません。進行したがんほど再発率が高くなり、これが生存率に影響を与える可能性も出てきます。いちばん重要なのは、早期治療の大切さを知っておくことです。

大腸がんの生存率と再発率は?

大腸がんの「5年相対生存率」は男女ともほぼ同じく、全体で約73%です。これを進行度で表すステージ別に見るとⅠ期で94.5%、Ⅱ期では88.4%、さらにⅢ期では77.3%、そしてⅣ期になると18.7%と急激に生存率が低くなります。 また、ステージごとの再発率は治療を始めるのが初期の0期ならほとんど再発しません。これがⅠ期なら約6%、Ⅱ期なら約15%、Ⅲ期になると約30%とステージが上がるに連れて再発率も増えていきます。

そして、早期の段階なら大腸内視鏡を使って治療できる場合が多いというのも、再発率や生存率と並んで早期発見が重要な理由のひとつです。これにより、患者さんの負担が大きく変わってきます。また、近年の腹腔鏡の進歩によって、開腹(腹部を手術で切開する)をしない腹腔鏡手術の方法も増えてきました。さまざまな治療法の選択ができるようになった一方で、治療方法を決める要素ともなる「深達度(がんが大腸の壁のどの深さまで広がっているか)」を確認することも大切です。

代表的な大腸がんの治療

大腸がんの治療はステージや深達度に加え、患者さんごとのがんの性質や身体の状態なども考えながら総合的に検討します。標準的な治療では初期の0期からⅢ期で主にがんを切除できるかどうかを判断し、ほとんどの場合で内視鏡や腹腔鏡、開腹での手術を行うことが可能です。そこで再発リスクの高いⅡ期や、Ⅲ期については手術後に薬物療法も行うことが推奨されます(これを補助化学療法という)。

さらに進行しているⅣ期では、ほかの臓器に転移したがんも切除できるかどうかを判断しなければなりません。もし、手術で切除することができない場合は薬物療法のほか、放射線治療や対症療法など手術以外による治療を行います。ひとによっては、手術で切除できなかった場合でも薬物療法が効果を示すことで、そのあとの手術で切除することが可能になることもあります。 どのような治療方法を選ぶとしても早い段階で治療方針を医師と一緒に確認し、起こり得る副作用などに対する心構えや準備をしておくことも大切です。

手術によって起こる副作用や影響は?

大腸がんの治療による合併症や副作用は、その治療方法によっても異なります。多くの場合で行う内視鏡をつかったがんの切除では、治療したあとの出血や、大腸の一部に穴が開く“穿孔(せんこう)”が起こる可能性があります。このとき出やすい症状は、血便や腹痛、発熱などです。一方、進行したがんで内視鏡治療による切除が難しいときに行う手術(外科治療)の場合、がんだけでなく腸管やリンパ節も切除することが多く、術後に合併症を起こすこともあります。これには、縫合不全(ほうごうふぜん)※や創感染(そうかんせん)※、腸閉塞(ちょうへいそく)※などがあり、それぞれの状況に応じた治療を行います。

そのほか、尿あるいは便に関するトラブルや性生活、妊よう性※に影響を与える可能性もゼロではないため、不安や疑問があるときにはすぐに医師へ相談することが大切です。

※縫合不全(ほうごうふぜん):腸管を縫い合わせたつなぎ目から腸の内容物が漏れ、その周囲に炎症を起こすこと。

※創感染(そうかんせん):皮膚を縫い合わせた部分に感染が起こること。

※腸閉塞(ちょうへいそく):腸の炎症によって本来はくっついていない所が部分的にくっつき、腸管の通りが悪くなる状態のこと。

薬物療法だけでは治らない?

近年、テレビやメディアでも多く取り上げられている“免疫チェックポイント阻害薬※”も、大腸がんの治療のために薬物療法で用いられる薬の一種です。ほかにもあるさまざまな薬と組み合わせて使います。ただし、現状ではこうした薬物療法のみで大腸がんを完治することは出来ません。がんを小さくして手術ができるようにしたり、がんの進行を抑えて延命や症状を軽くしたりするために使うのが目的です。

また、がんの治療によって身体を動かす機会が減ると身体機能が低下します。さらに、社会的な環境の変化によって心のつらさも伴うことに、周囲を含めた心配りが必要です。悩みや不安は抱え込まずに、がんと診断されたときから受けることのできる「緩和ケア」についても、医師に加えてコメディカルスタッフ※へ気軽に相談するようにしましょう。

※免疫チェックポイント阻害薬:がん細胞が免疫にブレーキをかけるのを防ぐことで、免疫が本来のがんを攻撃する力を保つようにする薬のこと。

※コメディカルスタッフ:医師を除く医療従事者の総称で、治療に関わる看護師や薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、栄養士など患者さんのあらゆるQOl改善のために支援する専門知識を持ったスタッフのこと。

大腸がんが不安な人へ

医療が進歩するにつれて大腸がんの治療方法も、選択肢は増えてきているものの依然としていちばん重要なのは早期発見です。また、医療機関で相談できるのは「血便が出た」「便潜血陽性と言われた」というような場合にかぎりません。「家族や親しい人で大腸がんに悩む人がいて不安」という人も、一度、医療機関で相談してみるとよいでしょう。

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