2023.04.28/最終更新日 2023.04.28

痔の症状や原因、悪化させないためのセルフケアと注意点

腸の病気

痔は大きく分けて3種類あり、症状や治療方法も一部異なります。近年では市販薬の塗り薬や坐薬などを便利に選べる反面、ある調査では5人に1人が自分の痔の種類がどれに該当するか分からないという結果も。ここでは2020年版のガイドラインをもとに3種類の痔ごとにみる症状から検査と治療方法、予防するための8つの習慣について紹介します。これらの知識を身に付けることで、痔と似た症状がでる大きな病気の早期発見につなげましょう。

痔には3つの種類がある

痔とは肛門付近に負担がかかることで血液の流れが滞って起こる肛門の病気の総称で、医学用語では痔疾(じしつ)と呼びます。これが生活習慣病の一つとも言われる理由は、便秘や下痢、長時間にわたる同じ姿勢や重い荷物を持つなどの日常的な習慣も原因となる可能性があるためです。また、女性は妊娠や出産によっても発症することがあります。 ただし、他の病気が原因となって二次的に引き起こされていることもあり、単なる痔と侮らないことが大切です。痔はその病態から、「痔核(じかく、いぼ痔)」「痔ろう(あな痔)」「裂肛(れっこう、切れ痔)」の3つに分類されます。

「痔核(いぼ痔)」の症状と原因

肛門に関する病気のうち、最も多いのが痔核(いぼ痔)です。これは肛門内部の細かい血管が部分的に拡がってイボ状に大きくなったもので、生じる部分により内痔核と外痔核に分けられます。肛門内で直腸粘膜と皮膚の境目にある歯状線(しじょうせん)から上部にできるのが内痔核、それよりも下部にできるのが外痔核。この2つの大きな違いは、痛みを感じるかどうかです。

直腸粘膜には知覚神経が通っていないため、内痔核では痛みをほとんど感じません。そのため、排便時に肛門から大きくなった痔核がはみ出る脱肛(だっこう)や出血することで気づく人がほとんどです。反対に皮膚にできる外痔核では知覚神経がたくさんあり、排便と関係なく出血や肛門付近に痛みを伴います。このうち出血は鮮やかな赤色で、便と混ざっていることは殆どありません。また、痒みが出たり粘液が漏れ出したりするのも痔核に伴う症状の一つです。

痔核を発症することが多いのは、慢性的な便秘を患う人やお腹に圧力のかかるような重い物を扱う職業の人、長時間にわたり座ったまま仕事をする人など。このような環境では肛門を完全に閉じるための組織(肛門クッション組織)が弱くなって、その組織内にある細かい血管がうっ血し易くなり肥大化していきます。痔核の原因は諸説あるものの、これがいちばん有力な説です。

「痔ろう(あな痔)」の症状と原因

痔ろうは別名であな痔とも呼ばれ、直腸から肛門付近の皮膚へとつながるトンネル(これを「ろう管」という)のようなものができる痔です。通常、肛門内部の歯状線には、肛門腺という分泌液を出す部分とつながっている幾つかの穴(肛門小窩、こうもんしょうか)があります。抵抗力が弱っているとこの穴を通って入り込んだ細菌が肛門腺に感染を起こして膿が溜まり、袋状の膿瘍(のうよう)が形成されることで突然の痛みや肛門周囲の腫れを発症。さらには発熱などの全身症状を伴うこともあります。

この膿瘍は自然に潰れて皮膚にできたトンネルの出口から膿が排出されるほか、医療機関で行う外科処置(切開)によって膿が外に出されれば痛みはなくなります。しかし、痛みを感じることなく直腸の周囲に炎症が拡がって重症化したり、トンネルが枝分かれしながら増えて「がん」が発生したりすることもあるため、放っておかないことが重要です。

「裂肛(切れ痔)」の症状と原因

裂肛(れっこう)というのは、肛門内の皮膚(上皮組織)に亀裂や潰瘍などができる状態の総称です。症状が表面上に留まる急性裂肛に対し、繰り返し起こる慢性裂肛の場合は肛門内の筋肉繊維が見えるほど切れ目が深くなることも。加えて、歯状線に肥大化した乳頭(肛門ポリープ)や、潰瘍の外側にある皮膚にたるみが生じてできる肛門皮垂(ひすい、見張りイボとも呼ぶ)が見られるのも慢性裂肛の特徴です。

原因でいちばん多いのは、硬くて太い便により肛門内の皮膚が伸ばされ過ぎて裂けること。また、硬い便だけでなく下痢による粘膜への刺激や肛門の筋肉における過度な緊張、肛門内での血流の悪さなどが原因となって発症することもあります。

症状としては排便時に痛みを伴うものの、出血量はそこまで多くありません。ただし、慢性化すると痛みの続く時間は長くなります。さらに、切れ目は深くなってその周囲が硬くなり(潰瘍化)、やがて肛門が狭くなる肛門狭窄(きょうさく)を招くリスクもあるため、早い段階で治療することが大切です。

潜んでいる別の病気に注意!

3種類どの痔についても欠かすことが出来ないのが医師による詳しい問診で、痔以外の肛門周囲にできる病気の存在を確認することが重要です。例えば、「肛門がん」で起こる出血や痛みは痔核と裂肛の症状に似ています。また、「直腸がん」では痛みを感じにくいため、出血の症状があっても内痔核と思い込んでいる人がいるかもしれません。同様に、「潰瘍性大腸炎」や「直腸炎」でも早い段階では出血のほかに症状が出にくいため、受診に至らない人もいるでしょう。

ほかにも、肛門で裂肛や痔ろうと似た症状を呈する「クローン病」や、症状が内痔核と似ている肛門の筋肉における機能低下を招く「直腸脱」など。こうした良性から悪性のものまで、様々な病気が潜んでいる可能性もゼロではありません。

検査と治療方法

診察では発症している部分の視診※や直腸肛門指診※のほか、必要に応じて超音波や肛門鏡、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)を用いた検査が行われます。このうち痔核では、排便と同じようにいきんだ状態で外に出る痔核の大きさなどを診る「怒責診(どせきしん)」を行うことも。こうした綿密な検査は影に潜んでいる大きな病気を見過ごさずに、痔の症状をきちんと把握して適切な治療を行ために必要です。

そして治療では痛みの程度、発症部位の症状に合わせて薬の使用や外科的な治療などを選択します。加えて十分な水分量と食物繊維の摂取、アルコールの過剰摂取を控えるなどの生活習慣の改善を図ることも治療の一環です。なかでも特に重要なのは、正しい排便習慣を身に着けること。さらに痔の種類によっても治療方法は異なり、痔ろうの場合は速やかな外科処置で内部の膿を出すことが重要です。

※視診:目で見て医師が診断すること。
※直腸肛門指診:医師が肛門の中に指を入れて直腸の中を診ること。

悪化や発症を予防する8つの習慣

いま抱えている痔の対策や再発の予防を含め、経験のない人も予防するには次の点に注意してください。これらを実践していても症状が現れる場合には、影に潜む病気の早期発見につなげるためにも早い段階で医療機関を受診するようにしましょう。

【痔の対策&予防方法】

・排便時には強くいきまずに時間を短くする
・排便後にはウォシュレットや濡れティッシュ※を活用する
・同じ姿勢を長時間に渡り続けない
・便秘や下痢に注意する
・お尻や腰を冷やさないようにして血行を維持する
・入浴により血行を整えて肛門の清潔も保つ
・飲酒や香辛料などの刺激物は控える
・免疫力低下を防ぐために気持ちの安定化を心がける

※便器に流すことが出来ないタイプの濡れティッシュを使う場合は、誤って流さないように注意しましょう。

また、治療には市販薬でも数々の選択肢がある一方で、誤った方法を選んだり慢性化したりすると治療が複雑になることもあります。大切なのは正しい知識を身に付けることと、自己判断でやり過ごさないこと。いつまでも健康な肛門で過ごせるように、身近な習慣から心がけていきましょう。

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