近年、電話診療やオンライン診療などをつかって受診する人が増えています。一方で、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を受ける機会が減り、最後に検査を受けてから数年も経過していたり、予約が先延ばしになっていたりしませんか?40歳から増え始める大腸がんの予防には大腸カメラが有効です。今回は、それが「痛い」「つらい」といわれる理由とその解決策、さらには医療機関をえらぶコツについてもご紹介します。
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を先延ばしにしていませんか?
健康診断やがん検診を定期的に受けていますか?厚生労働省の調査によると、新型コロナウイルス感染症の影響がもっとも大きく出た一定期間で、健康診断の受診率が大幅に減少したということが分かっています。まだ影響のない2019年4月と翌年の4年を比べると、健康診断の受診数はおよそ5分の1。そして同じ時期の4~7月でがん検診を受けた合計数を比べると、およそ3分の1にまで減っていました。
そして、ほかの検査と比べるとすこしハードルが高く感じる大腸カメラも、受ける機会の減った人や延期している人がいるかもしれません。
食生活の欧米化に伴う動物性タンパク質や脂肪分の摂りすぎ、運動不足、肥満、喫煙、飲酒量が多い方は大腸がんになる可能性が高いことが知られています。また、遺伝的な要因が関係していることもあり大腸がん家系の方は、大腸カメラを受けることが推奨されています。
大腸がんが増え始めるのは男女ともに40歳から
がん検診に含まれるのは、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんの5種類で、その対象年齢は子宮頸がんのみ20歳以上、ほかの4種類は40歳以上が対象です。このうち日本でいちばん罹患数の高い大腸がんは、男女ともに40歳を超える頃から増え始めています。(年齢階級別 大腸がん罹患率 2018年)
大腸がんの罹患数は男性では3位、女性では2位、総数ではなんと1位です。
人数にしておよそ1,000人に1人。つまり、働き盛りの世代に多くの人が大腸がんと向き合うことになります。
早期発見がカギ!大腸がんの生存率は?
大腸がんは罹患数そのものが多いことにくわえ、その死亡数も、男性3位、女性はなんと1位になっています。50歳以上の2人にひとりはがんになると言われる時代、罹患した多くの人があと何年、生きられるのかと不安に思うことでしょう。
大腸がんの場合、がんの進行度を表すステージが初期の0からⅠまでにおける5年相対生存率※(以降、生存率)は90%以上です。さらに進行するとステージⅡで89.0%、ステージⅢで77.5%と低くなっていき、もっとも進んだステージⅣでは一気に18.8%まで低くなります。この推移からも分かるように、いかに早い段階で見つけられるかが重要だと言えるでしょう。
※5年相対生存率:生存率には実測生存率と相対生存率の2つがあり、前者はがん以外の死因を含めて死亡を計算した生存率で、後者はがんが死因によるものだけを割り出して計算した生存率のこと。
「その血便、本当に痔?」ほとんど症状がない早期の大腸がん
40歳から増え始める大腸がんは、早期だと症状のないことがほとんどです。また、この世代は仕事や子育てなどで忙しく、持病がなければ医療機関をふだんから受診する人は少ないかもしれません。
進行すると血便(便に血が混じるもの)や、便通異常(下痢と便秘をくり返したり細い便、便が残る感じがしたりするものなど)のほか、お腹の張りや腹痛、貧血などが見られます。とくにおうち時間の長くなりがちな昨今では、座ったままの状態や運動不足による痔で悩む人も少なくないでしょう。このうち高い頻度でおこる血便や下血※は、痔などの病気でも見られます。
こうした症状があり、「実は大腸がんが原因だった」と分かったときには、それなりにステージも進行していて心身のショックは避けられません。今や、大腸がんは予防できる病気のひとつになりました。症状のまったくない元気なうちに、検診を受けておくことが心身ともに健やかにすごすための土台となります。
※下血:腸からの出血によって、赤い色または赤黒い色の便が出たり、便の表面に血液が付着したりする状態のこと。
大腸カメラが「痛い」「つらい」といわれる理由
大腸カメラと聞くと、「痛い」「つらい」といったイメージを持つかもしれません。
この「痛い」における主な原因は、腸に管(スコープ)を通すときや、カメラが腸の内壁に押しあたるときに感じる刺激です。この刺激は大腸を引き延ばすときに出やすいため、反対に畳み込みながらカメラを直線的に挿入すると痛みを抑えることができます。また、身体に負担のすくない鎮静剤をつかうのも有効です。
一方の「つらい」における原因は、検査前に2Lもの下剤(腸管洗浄剤)を飲むことや、数時間もかけて排便をしなければならないこと、検査中のお腹の張り感など。加えて、恥ずかしい、不安というような気持ちの面でのつらさもあるでしょう。
お腹の張りに対しては炭酸ガスをつかって管を挿入すると、つらさを感じにくくすることが出来ます。また、完全個室や検査室以外の環境設備と医療スタッフの配慮も、検査後のイメージを大きく左右する要因です。
大腸カメラはほかの検査で代用できる?
40歳を超えると年に一度は、便潜血検査による検診を受けることが推奨されています。この検査で陽性になった場合、大腸カメラのほかに手段はないのでしょうか?
近年、大きさ11㎜×31㎜ほどの「カプセル内視鏡」による検査が、小腸用と大腸用で保険適用となりました。しかし、これを医療保険を使って受けることのできる人は、2022年3月時点では大腸カメラを受けることが困難な人に限られています。ここで、高性能の小型カメラを搭載したカプセルの視野角は344°(カプセルの両端カメラの視野角は各172°)でその範囲は100%ではなく、撮影できる枚数もまた無限大ではありません。
あと、CTコロノグラフィ検査(別名、大腸3D-CT検査)といって、肛門から二酸化炭素を注入しCT撮影をおこなう検査もあります。ただし、どちらの検査もポリープなどの異常が発見された場合は改めて大腸カメラを受けることが必要です。
対して大腸カメラなら、360°くまなく観察することができ、その場でポリープの切除 も可能なため一度の負担ですみます。
大腸カメラを受ける医療機関えらびのコツ
定期的に受けることが必要な大腸カメラには、通いやすい立地と安心できる環境の整った医療機関を選ぶことが重要です。
一連の検査や準備、費用などについて詳しい説明が受けられることはもちろん、大腸がん以外のさまざまなお腹の不調に対しても、継続して治療をおこなってくれるかどうか確認しておきましょう。さらに、共働きや核家族の人が増える昨今では、土日でも検査が受けられるかどうかというのも選択肢のひとつ。たとえば、公式サイトから24時間WEB予約ができたり、検査結果をオンライン診療や郵送で受けることができたりと、時代の流れに沿ったニーズに対応をしてくれるかもポイントです。
こうした検査をきっかけとして症状のない元気なうちに、症状のある場合でも軽度のうちに、自分にあった“かかりつけ病院”を探してみるのはいかがでしょうか。