2025年9月、世界初のミトコンドリア病治療薬「エラミプレチド」が登場しました。さらに、「ミトコン酸5」「proAX(プロアックス)」といった化合物や、「ミトコンドリア移植」などの治療法における研究開発も進行中です。
計3回にわたる連載のうち、最後となる今回は、治療や改善に的をあてた最近の研究報告に関する話題と、ミトコンドリアの品質管理として重要な機能「ミトファジー」を分かりやすく解説します。
そして、ミトコンドリアの質を高めるには、3つの方法(運動、サプリメントの摂取、医療機関での抗酸化療法)が有効です。「若返り」や「抗酸化」に留まらず、ミトコンドリアを意識した健康設計を取り入れるためにお役立てください。
ミトコンドリア研究の今!新薬登場と注目の情報
ミトコンドリアの機能低下やミトコンドリア病の治療薬は、まだほとんどないのが現状で、世界中で新規開発が進められています。そうしたなかで、2025年9月、ミトコンドリア病の治療薬がついに世界で初めて登場しました。治療と改善に的を当てた最近の研究報告から、押さえておきたい4つの情報を紹介します。
情報① 世界初のミトコンドリア病治療薬が承認
2025年9月、ミトコンドリア病※の一種「バース症候群(BTHS)」に対する治療薬「エラミプレチド」(一般名、製品名はForzinity)が、FDA(米国食品医薬品局)によって承認されました。これは、世界で初めてのミトコンドリア病治療薬です。
バース症候群とは、心筋症や骨格筋障害、好中球減少症、成長遅延などを特徴とする非常に珍しい遺伝性疾患で、一部の乳児は生後1年以内に死亡するとも言われています。この病気は、「TAZ遺伝子」の変異によって引き起こされることが特徴です。TAZ遺伝子は脂質代謝に関わる重要な遺伝子で、ミトコンドリア内膜の構造形成やその維持と、ATP合成を安定化する機能も担っています。
エラミプレチドは飲み薬ではなく、腹部や太ももなどに打つ皮下注射で、米国の製薬企業によって開発されました。日本ではまだ承認されていません。その作用機序は、ミトコンドリア内膜に到達してひだ状構造(クリステ)を安定化し、酸化ストレスを減らすことでATP産生を促し、ミトコンドリアの機能を改善します。
一方、ミトコンドリアの機能低下は、神経変性疾患や心臓病、糖尿病など一般的な病気においても見られています。そのため、現状での治療対象はバース症候群にかぎられているものの、将来的には多くの病気に対して有益な治療法となる期待が寄せられているのです。
※ミトコンドリア病については、連載2回目の記事『「ミトコンドリア」連載② 自律神経・女性の健康・健康寿命・ウイルス感染との関連性、ミトコンドリア病とは?』で解説しています。

情報② 国内では植物ホルモン構造を基にした新薬も開発中
そして、国内でも積極的に治療薬の開発が進められています。これまで、臨床的に使用されてきたのは補酵素Q10(CoQ10)などの物質です。しかし、その有効性は限定的で、未だその治療方法は確立に至っていません。
今いちばん有力視されている候補は、植物ホルモンとして多くの植物に存在するインドール-3-酢酸を誘導するための新しい合成誘導体「ミトコン酸5(MA-5、Mitochonic Acid 5)」です。
ミトコンドリアの機能低下では、呼吸鎖複合体の障害が中心となって細胞の酸化ストレスが増大する結果、ATPの枯渇が見られます。したがって、細胞内のATP量を上昇させることができれば、ミトコンドリアの機能が改善するはずです。ミトコン酸5は、この仮説のもとに開発され、2025年6月にその研究成果が発表されました。
ミトコン酸5の作用機序は、ミトコンドリア内膜のひだ状構造(クリステ)に存在する、特定のタンパク質に結合することから始まります。これにより、ミトコンドリアの構造が改善され、ATP合成酵素の働きを向上させることで、効率的なエネルギー産生ができるようになると考えられています。
実際に、バース症候群の患者さんから採取した皮膚の細胞や、iPS細胞※からつくった筋肉細胞を用いた研究では、それを立証するような成果報告も。対象となる細胞に対し、ミトコン酸5を作用させると、ミトコンドリア機能の改善とともにATP産生は増加し、酸化ストレスによる細胞死も減少したことが示されました。
そのほか、ショウジョウバエのバース症候群モデルでは、ミトコン酸5を与えると運動能力が向上し、異常な心拍数も軽減したことが報告されています。
世界中で高齢化の加速する現代において、加齢による筋力低下は重要な健康課題の一つです。ミトコンドリア病のような珍しい遺伝性疾患だけでなく、こうした新規治療薬の登場は、多くの人が心待ちにしていることでしょう。
※iPS細胞(人工多能性幹細胞):ヒトの皮膚や血液などの細胞に、わずかな因子を導入し培養することでつくられる幹細胞で、さまざまな組織や臓器に分化でき、ほぼ無限に増殖できるといった多能性をもつ。

情報③ ATP濃度を上げる新規プロドラッグも開発中
さらに、「エラミプレチド」や「ミトコン酸5」とは全く異なる機序で、ミトコンドリアにアプローチする治療薬の開発も進められています。それは、2025年6月に登場し、「proAX(プロアックス)」と名付けられた新しい核酸プロドラッグです。
プロドラッグというのは、体内で代謝されることにより初めて効果を発揮する性質をもつ薬物のこと。そして、核酸プロドラッグというのは、DNAやRNAの断片を基本骨格にもつ薬物に、特定の“飾り(保護基)”をくっつけることでプロドラッグにしたものです。
プロドラッグにすることで核酸医薬品は細胞膜を通過できるようになり、目的の場所に到達してから“飾り”を外し、そこで初めて効果を発揮します。
研究では、proAXをヒトの線維芽細胞(せんいがさいぼう)※に添加すると、数時間で細胞内のATP濃度がproAXの量に比例して増えることが示されました。そのメカニズムは、まず細胞膜を通過したproAXから“飾り”が外れ、ATPと相互関係にあるAMPの濃度が上昇します。すると、細胞内でエネルギーセンサーとして働く「AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)」が活性化し、これが細胞に対してエネルギー不足に陥っていると認識させます。
簡単に例えると、細胞に対して運動している状態だと認識させるのです。これによって、ミトコンドリアはATP産生の原料を調達するために、脂肪酸の酸化を促します。
そのほか、proAXは活性酸素の発生抑制や、細胞における酸化ストレス耐性の向上などももたらします。驚くことに、線虫への投与では、平均寿命が24%も延びました。現在、治療薬として承認されるために、研究が進められているところです。
このような研究成果は、加齢や老化に伴うエネルギー代謝低下に対し、根本的な視点から向き合うための新しい一手となる可能性を秘めているといえるでしょう。
※線維芽細胞:皮膚の真皮層や全身の結合組織に分布し、コラーゲンやヒアルロン酸といった細胞外マトリックスの合成を担うほか、組織の修復や再生にも関わる細胞。

情報④ ミトコンドリアも腸内細菌と同じく「移植」に注目!
ミトコンドリアの機能低下に対するアプローチは、治療薬だけに留まりません。最近になって徐々に知られてきた腸内細菌の移植※と同様に、ミトコンドリアについても移植によって改善が期待できることが分かってきました。
この背景にあるのが、ミトコンドリアが細胞から細胞へと移動する「細胞間ミトコンドリア輸送」と呼ばれる現象です。事実、ミトコンドリアは移植した健康な細胞から、損傷したミトコンドリアをもつ細胞へ、活発に輸送されていることが最近の研究で明らかになっています。
ミトコンドリア病の一種である「リー症候群」※をモデル化したマウスを用いた実験では、骨髄移植によってドナー細胞由来の正常なミトコンドリアが、モデル化マウスの全身に移行することが示されました。
また、健康なマウスのミトコンドリアをモデル化マウスに移植すると、病気の症状が和らぎ、寿命が延びることも分かっています。さらに、人工的に作られたヒトのミトコンドリアをモデル化マウスに移植した場合も、同様の結果が得られました。
もしかしたら、そう遠くない未来に、ミトコンドリアの移植によって健康寿命の延伸を図る時代が訪れるのかもしれません。
※腸内細菌の移植については、既存記事【「腸内細菌」の最新知識をおさえて、自分にぴったりの「腸活」をしよう!】で紹介していますので参考にしてください。
※リー症候群:乳幼児期に発症し、発達遅延や筋力低下、呼吸困難などの重篤な症状が徐々に進行して、発症後数年で死に至ることもあるする遺伝性のミトコンドリア病。

ミトコンドリアの質を決める「ミトファジー」とは?
ミトコンドリアも私たちの細胞と同じように、日々、古くなったり損傷したりした部分のメンテナンスをしながら恒常性を保っています。それは「ミトファジー」と呼ばれる、ミトコンドリアの品質管理システムです。
「ミトファジー」は、ミトコンドリアとオートファジーを組み合わせて名付けられました。「オートファジー」とは、細胞が自身の成分を分解する現象のことです。タンパク質をアミノ酸に分解し、栄養として再利用することに加え、ミトコンドリアなどの細胞小器官を分解することで、その質と量を調節しています。
ミトファジーが正常に機能するにはいくつかの因子が必要です。このうち、「PINK1」と「パーキン」は損傷したミトコンドリアに蓄積します。すると、そのミトコンドリアは融合(合体)しているネットワーク構造※から分離され、細胞のオートファジーに取り込まれるように誘導されます。
その後、「BNIP3」と「NIX」という因子が、誘導されたミトコンドリア外膜と細胞質に存在する隔離膜※とを密着させます。この隔離膜がミトコンドリアを包み込むように伸びていき、やがて袋状の小胞(これをオートファゴソームと呼ぶ)を形成します。続いて、この小胞は、細胞小器官で多くの加水分解酵素を備えるリソソームへと輸送されます。
最終的に、ミトコンドリアはその中で分解されるというのが、ミトファジーの大まかな流れです。
ミトファジーは、ミトコンドリアの質と量をより良く保つだけでなく、異常ミトコンドリアによって生じるストレスから細胞を守るために欠かせません。
※ミトコンドリアの融合(合体)やネットワーク構造については、連載1回目の記事『「ミトコンドリア」連載① エネルギー産生だけじゃない多機能性!細胞内共生説を裏付ける構造とは』で解説しています。
※隔離膜:オートファジーが誘導されるときに細胞質に現れる扁平な二重膜の構造体。

ミトコンドリアの質を高める方法
ミトファジーは、ATP産生に伴い生じる活性酸素によって傷付いた異常ミトコンドリアを取り除き、ミトコンドリアの質と量を整えるために重要な機能です。したがって、ミトコンドリアの質を高めるということは、ミトファジーを正しく機能させることと言っても過言ではありません。
しかし、ミトファジーの機能を正常化する確かな方法はまだ見つかっていないため、現時点で、効果があると期待される3つの方法について紹介します。
方法① 運動&日常生活の見直し
以前から、定期的な運動は骨格筋のミトコンドリアを増加させ、密度を上げることが知られています。なかでも、全身性の持久的トレーニングが、ミトコンドリアの形状とその調節因子に良い影響を与えることが明らかになってきました。
持久的トレーニングとは、長時間継続して行う有酸素運動です。これは、持久力トレーニングとも呼ばれ、全身性のトレーニングと、部分的な筋肉における筋持久的トレーニングに大別されます。その目的は、大気から取り込んだ酸素を利用し、筋組織で糖や脂肪を分解することで、身体活動に必要なエネルギーの産生能力を向上させることです。これにより、肺や心臓の働きが強化され、毛細血管が発達して筋血流量の増加と酸素の運搬能力が高まります。
一方、レジスタンス運動というのは、筋持久的トレーニング(いわゆる「筋トレ」)の一種です。これは、特定の筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返しおこなうことで、その筋肉の強度や機能の向上を目的としています。レジスタンス運動では、大きな負荷のかかった筋線維が壊れ、これが修復するときにより太い筋線維がつくられるのが特徴です。この修復にかかる2~3日間は、休息を設けるように注意しましょう。

どちらの運動も、ミトコンドリアの代謝向上によってインスリン感受性を改善し、血糖値の上昇を抑えることで、肥満や生活習慣病の予防につながります。さらに、ミトコンドリアの質を高めることに視点を置くなら、全身性の持久的トレーニングは欠かせません。なぜなら、活性酸素を除去するときに働くミトコンドリア局在の抗酸化酵素「SOD2(スーパーオキシドジスムターゼ2)」※の量が、レジスタンス運動よりも5倍多いことが研究で報告されているからです。
2つそれぞれの特徴や運動メニュー、強度、推奨頻度については、以下の表を参考にしてください。(ここでは、競技など専門的な強化を目的としておこなう「インターバルトレーニング」の情報は割愛します。)
【トレーニング2種類の代表的なメニューと特徴】※
|
持久的(持久力)トレーニング |
レジスタンス運動 | |
| 運動を長く続ける能力の向上 | 特 徴 | 特定の筋肉の強度や機能の向上 |
| 歩行、ランニング、水泳、サイクリング、 | 運動メニュー | ウエイトトレーニング(ダンベル、マシンなどを利用)、自重トレーニング(スクワット、腕立て伏せ、プランクなど)、 |
| 「ややきつい」と感じる程度、心拍数120~150拍/分程度、 | 強 度 | 「できない」と感じる程度まで、息をこらえなくてすむ程度、 |
| 1回20~30分間、週3回以上で継続的に実施 | 推奨頻度 | 週2~3回、疲労回復のための期間をあける |
※以下、表作成のための参考元(順不同)
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」/ 岐阜県総合教育センター「学校間総合ネット」/ 厚生労働省「生活習慣病などの情報-レジスタンス運動」/ 厚生労働省「生活習慣病などの情報-「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:筋力トレーニングについて」
そして、運動だけでなく、日常生活の見直しも大切です。暴飲暴食や極端な飢餓は、ミトコンドリアの代謝機能を低下させることが分かっています。ビタミンを多く含むバランスのよい食事を心がけ、適度な睡眠で疲労を溜め込まないように心がけましょう。
※抗酸化酵素「SOD2(スーパーオキシドジスムターゼ2)」については、既存記事『「抗酸化療法」とは?活性酸素の知識と効果的な老化予防』で詳しく解説しています。

方法② サプリメントを飲む
サプリメントや健康食品を活用して、ミトコンドリアの質の向上を期待する方法もあります。栄養成分としては、ミトコンドリアでのATP合成反応に伴って随時消費されるようなビタミンB群、ビタミンC、リポ酸、ビオチン、カルニチン、コエンザイムQ10などを取り入れるとよいでしょう。
また、プロバイオティクスの一種で短鎖脂肪酸の「酪酸」は、骨格筋のミトコンドリア機能を増加させるように働くことが、マウスを用いた実験で示されています。
あと、サーチュイン遺伝子※を活性化させる植物由来の抗酸化ポリフェノール「レスベラトロール」も、ミトコンドリアの量と活性を増加させることが報告されています。
※サーチュイン遺伝子については、既存記事『長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)とは?その検査と活性化する方法』で詳しく解説しています。

一方、広く自然界に分布する天然アミノ酸の「5-ALA(5-aminolevulinic acid)」も選択肢の一つです。5-ALAは、生体内ではヘムの構成成分となることで、多くの生命反応において基盤となります。ヘムとは、8つの5-ALAが環状に結合し、中心に鉄イオンを配置した構造をとる化合物です。
実は、ミトコンドリアにおける呼吸鎖複合体※のほとんどが、このヘムを活性中心として持っています。そのため、5-ALAを体外から取り入れることで、ミトコンドリア機能に加え、糖や脂質の代謝異常についても改善できる可能性があるのです。
実際、薬をつかって治療中のⅡ型糖尿病患者さんにおいて、5-ALAと鉄サプリメントを摂取すると、食後血糖値とHbA1c(糖化ヘモグロビン)の数値が改善したことが報告されています。
※ミトコンドリアの呼吸鎖複合体については、連載1回目の記事『「ミトコンドリア」連載① エネルギー産生だけじゃない多機能性!細胞内共生説を裏付ける構造とは』で解説しています。

そのほか、近年の市場で多く見かけるようになってきたニコチンアミド・モノヌクレオチド(Nicotinamide mononucleotide、以降「ニコチンアミド誘導体」)も有力候補の一つです。ニコチンアミド誘導体は細胞内で代謝されてNAD+となり、その濃度が上がると、ミトコンドリア機能を上昇させることが確認されています。このNAD+は老化とともに減少することから、ミトコンドリア機能の向上だけでなく、多くの老化性疾患においても鍵になると考えられ、研究が進められているところです。

方法③ 医療機関で抗酸化療法を受ける
ミトコンドリアは、ATP産生に伴って活性酸素を発生させる反面、活性酸素に対する防御機構も備えています。この防御機構は大きく分けて2種類あり、一つはSOD2(スーパーオキシドジスムターゼ)が活性酸素を除去する「消去酵素系」。もう一つは、不安定な電子の連鎖反応を停める「電子補足系」です。
「電子補足系」に関わる分子としては、ビタミンCやα-トコフェロール(ビタミンEの一種)、CoQ10、グルタチオン、システイン、β-カロテンなどが該当します。
2つの防御機構をサポートする方法と、そもそも活性酸素を増やさないようにする方法を組み合わせれば、より、ミトコンドリアの質の向上も期待できるでしょう。これには、医療機関で自由診療として提供される抗酸化療法がおすすめです。
そのメリットは、ライフスタイルや食生活の改善、健康課題への対処など、すでに実践している他の取り組みがある場合も、医師がそれらを踏まえて自分に一番あった治療法を選択してくれること。
例えば、以下の表に挙げるような抗酸化療法が有名です。現状では、ミトコンドリアの質の向上を目的として受ける抗酸化療法は保険適用になりません。その特徴や費用などについて、しっかりと説明を受け、納得してから受けるようにしましょう。
点滴の名称 |
特徴 |
| ニコチンアミド・モノヌクレオチド点滴 | NAD+の前駆体であるニコチンアミド誘導体を補うことで、ミトコンドリアの機能向上に加え、サーチュイン遺伝子の活性化が期待できる。 |
| 高濃度グルタチオン点滴 | グルタチオンは3つのアミノ酸からなり、強力な抗酸化作用をもつ。活性酸素の除去に加え、ミトコンドリアにおける機能不全の回避と修復力の維持について、主要な役割を担う。 |
| 水素吸入療法 | 水素分子は極めて小さいことで、細胞内のミトコンドリアへすばやく到達し、有害な活性酸素だけを除去する。免疫システムやシグナル伝達に必要な一部の活性酸素には、影響を与えにくいことが特徴。 |
| 高濃度ビタミンC点滴 | ビタミンCはミトコンドリア膜電位を正常に保ち、活性酸素が増加するのを防ぐ。高濃度での投与により、がん治療に効果があることも報告され、近年ではミトコンドリアを保護する機能も注目されている。 |
| マイヤーズカクテル | グルタチオンやビタミンCを始め、ミトコンドリアのエネルギー代謝に役立つ複数のビタミンとミネラルを混合した点滴。疲れが気になる人や、毎日の食生活の乱れが気になる人にも有用。 |
| ニンニク注射 | ビタミンB群のうちB1、B2、B6、B12を配合し、疲れに対して即効性が期待できる点滴。ニンニク成分は無配合。なかでもビタミンB2は、ミトコンドリアのATP産生機能を増強し、老化状態に至るのを防ぐ効果がある。 |
| オゾン療法(「血液クレンジング」「血液バイタル療法」とも呼ぶ) | 血液オゾン点滴は、体内の抗酸化能や免疫機能を活性化させる再生医療の一つ。近年の研究では、高容量のオゾン療法がミトコンドリアの酸素消費率を増加させることが確認されている。 |

ミトコンドリアを意識すると人生が変わる!
連載3回を通して、ミトコンドリアの知識から、身近な健康課題との関連性、ミトコンドリア病、新薬や最新研究に関する情報、ミトファジー、そして、ミトコンドリアの質を高める方法について紹介しました。
現在、ミトコンドリアの機能障害は、老化を引き起こす12の要因の一つとして位置づけられています。ほかにも、皮膚のシワや色素沈着、脱毛といった見た目にも影響を与えることから、美容や「若返り」の分野においても隅に置けません。さらに、活性酸素の視点で言えば、「抗酸化」のキーワードにおいても鍵をにぎる存在と言えるでしょう。
新しい発見や研究報告など、ミトコンドリアの謎解きはこれからも続きます。まずは、これまでに分かっている根拠をもとに、ミトコンドリアを意識するような実践に移すことから始めてみませんか。
