2022.09.30/最終更新日 2023.01.31

「腸内細菌」の最新知識をおさえて、自分にぴったりの「腸活」をしよう!

腸内細菌

近年では、さまざまな要因で腸内環境が乱れることにより、免疫機能に加えて多くの不調をまねくことが分かってきました。これに対して今、新しい“腸活”が注目を集めているのを知っていますか?ここでは、腸内細菌の基本から、12種類2兆個もの善玉菌をダイレクトに腸へ届ける「乳酸菌注入療法」や、腸内細菌を効率よくたすける「乳酸菌生成エキス」について解説します。そのしくみを知ることで、セルフケアでおこなう腸活とのちがいを身に付け、自分に合った総合的な腸活を目指しましょう。

「腸内環境の乱れ」ってどういう状態?

ヒトはおなかの中にいる胎児期の段階から、すでに腸内細菌がすみ着いていると考えられています。そして、腸内細菌の集落とも言える“腸内細菌叢(さいきんそう、腸内フローラともいう)”が形成され始めるのもこの時期です。つづいて、生後1ヵ月までにビフィズス菌が増え、環境因子など多くの影響を受けながら、さまざまな菌が増殖。そして3歳ごろには、そのひとに固有の腸内細菌叢が出来上がります。

それは、全身の細胞数60兆個を上回る100兆個もの細菌で構成され、生涯にわたってほとんど変化しません。ただし、叢が大きく変化しなくても生活習慣の乱れやストレス、薬などによって腸内細菌が影響を受けると、そのバランスがくずれて腸内環境が乱れることに。この状態では腐敗ガスを生む悪玉菌が優位となって、さまざまな不調をひき起こします。

7つの代表的な腸内細菌の働き

腸内細菌というと、便通の改善や免疫システムへの関与を思い浮かべるひとも多いかもしれません。しかし、腸内細菌はまるで私たちの臓器のひとつであるかのような、重要な機能をいくつも担っています。大まかに分けると、その働きは次の7種類です。

  1. 短鎖脂肪酸やビタミン、ホルモン、酵素などをつくる「合成」
  2. 食べ物を細かく分解する「消化」
  3. 糖やアミノ酸、脂肪酸など栄養素を取り入れる「吸収」
  4. 毒素などを身体のそとに出す「排泄」
  5. 有害な化学物質を分解する「解毒」
  6. 腸内の腐敗(ふはい)をふせぐ「浄血(じょうけつ)」
  7. リンパ球など腸の免疫細胞をととのえる「免疫」

いまとくに注目されている、腸内細菌の働き

なかでも、腸内細菌が食物繊維をもとに発酵することでつくり出す短鎖脂肪酸※は、腸のエネルギー源として重要です。さらに、この短鎖脂肪酸のつくられる過程で水素が発生することで、活性酸素が中和されることも分かっています。また、免疫機能に影響をおよぼし、私たちの恒常性維持にも大きく寄与していることが近年の研究で明らかになってきました。研究では、肥満や糖尿病をかかえるマウスで特定の菌種が減っていることや、これを生菌または死菌として投与すると腸管バリアの増強やインスリン感受性が上がるというデータも。これには、腸内細菌のもつ細胞壁の分子がシグナルとして作用し、腸上皮細胞のタイトジャンクションを構成している分子の発現を高めるという報告もあります。

そして近年、“脳腸相関”でもあるようにセロトニンなどの神経伝達物質も腸でつくられ、これにも腸内細菌が関与しています。実際に、おなかの不調をかかえるひとにアンケートをとると、精神的な不調をかかえているというひとが少なくありません。また、IBS(過敏性腸症候群)などの炎症性疾患でも、腸と脳との関係が重要視されています。

※短鎖脂肪酸:ヒトの場合、酢酸、プロピオン酸、酪酸の3種類が代表的。

進歩した腸内細菌の研究と、おどろきの有効活用とは?

21世紀に入ってからDNAの塩基配列を決定する装置※が開発されたことで、腸内細菌の研究が飛躍的に進んできました。これによって腸内細菌の種類や機能を遺伝子解析の視点から分析できるようになり、多くの病気に関する治療や予防に役立つと期待されています。

このような背景もあって、ますます腸内細菌の重要性が唱えられるなか、消化器の世界では便移植をおこなうケースが増えてきました。

この便移植とは、正常なひとの便をろ過してから治療を要するひとの大腸に直接、注入するという方法で、実際に有効だというデータも出ています。ただし、現時点でこれは大学病院などで試験的におこなっている治療方法で、まだ一般的ではありません。 一方、これとまったく同じ手法で一般にも広くおこなわれているのが、「乳酸菌注入療法」です。

※DNAの塩基配列を決定する装置のことを、次世代シークエンサー(next generation sequencer)と呼ぶ。

腸へダイレクトに善玉菌を届ける「乳酸菌注入療法」

 

腸内細菌のうち悪玉菌が増えると、腐敗ガスが発生して細胞を傷つける原因に。しかし、善玉菌を増やすためにサプリメントなどで摂取しても胃酸に弱いため、なかなか腸までは行き届きません。かといって、便移植には抵抗があるというひとも多いでしょう。

ここで、腸内細菌のバランスを改善するには、生きた乳酸菌を大量に摂取することではなく、そのひとのもつ腸内細菌のバランスを保つことが重要です。そして、より長く腸内に善玉菌をとどまらせておくことが、腸内環境を改善する鍵となります。

この「乳酸菌注入療法」とは、盲腸(大腸と小腸の境目)に直接、12種類2兆個の善玉菌を注入する方法です。大腸内視鏡など、腸のなかをきれいにした状態で内視鏡チューブの先端から注入します。頻度は月1回程度で、だいたい3ヵ月間おこなうと、おなかの不調に加えて肌の状態や肥満の改善などに効果が見られるでしょう。

腸内細菌をたすける「乳酸菌生成エキス」

もう1つの方法は、善玉菌をたすけて効率よく生成させる成分が豊富にふくまれた「乳酸菌生成エキス」を飲む方法です。既存の乳酸菌製剤は、大きく分けると2種類。まず、ヨーグルトなど特定の細菌を補充するための「プロバイオティクス」。もう1つは、もともと棲みついている善玉菌を増やしたり、悪玉菌が増えるのを抑えたりする、食物繊維やオリゴ糖など難消化性成分の「プレバイオティクス」です。

そしてこの「乳酸菌生成エキス」は、「バイオジェニックス」という、まったく新しいカテゴリーで乳酸菌の分泌成分や菌体成分※をふくんでいます。これらの成分は、短鎖脂肪酸や必須アミノ酸、ビタミンD、葉酸などというような、善玉菌がつくり出す成分です。このエキスが自分の腸内細菌に働きかけて、免疫機能の刺激や活性酸素の除去、脂質や糖質などの代謝に対してサポートすることが期待されています。

※菌体成分:乳酸菌の細胞を構成している細胞壁などが、発酵などの処理によって分解された成分のこと。

ふだんのセルフケアで腸内細菌を増やすには?

しかし、腸内細菌はこれら2つの方法をおこなっても、その効果がずっとつづく訳ではありません。より長く良いバランスを保つには、日々の食生活や生活習慣がとても大切です。また、乳酸菌は胃酸で死んだとしても、その菌体成分がメリットになることも分かっています。つまり、サプリメントやヨーグルトなどは日常的に取り入れやすく、腸内細菌にとっても有用なものです。反対に、腸内細菌にわるい影響をあたえる食品添加物の摂り過ぎには注意し、食物繊維や発酵性食品などをふくむバランスの良い多彩な素材を取り入れましょう。加えて、睡眠不足やストレスをためない生活習慣を心がけることもお忘れなく。

これからの“腸活”におけるポイント

現時点では、「乳酸菌注入療法」や「乳酸菌生成エキス」には保険適用がないため、自由診療の扱いになります。(2022年9月時点)ただ、これまでの腸に対するアプローチとはまったく別の方法で、そのひとにあった腸内環境の改善が見込めることは確かです。

色々な“腸活”を試してみても効果が実感できないひとや、何かしらの不調が気になるひとは一度、専門の医療機関で相談してみましょう。

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