2022.06.27/最終更新日 2023.01.31

治療には正しい見極めが大事!過敏性腸症候群と潰瘍性大腸炎のちがい

腸の病気

急な腹痛や下痢で日常生活に影響がでていませんか?これらの症状を引き起こす過敏性腸症候群と潰瘍性大腸炎はどちらも原因不明の病気で、ふだんのストレスによって悪化することが分かっています。症状をくり返すうちに悪循環が生まれて日常生活への影響も大きくなるため、早い段階で大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)などをつかった正しい見極めが欠かせません。ここでは、ふたつの病気における共通点や治療方法のちがいについてご紹介します。おなかに不調を抱えているひとや、そうした悩みをもつひとを支えたい皆様にとって備えておきたい知識です。

原因不明のおなかの病気“過敏性腸症候群”と“潰瘍性大腸炎”とは?

仕事中や電車の中で急におなかが痛くなって、トイレに駆けこんだ経験はありませんか?とくに悪いものを食べたわけでもないのに下痢したり、冷えてもいないのに腹痛でうずくまったり。そんな予期せぬおなかの不調の裏には、もしかしたら病気がかくれているかもしれません。

突然このような症状を起こすおなかの病気には、「過敏性腸症候群」と「潰瘍性大腸炎」というものがあります。どちらも原因不明で急に起こる腹痛や下痢によって生活に支障をきたし、不安を抱えたまま過ごすひとの多い病気です。これらはストレスに影響を受けやすいため、ある意味で「心身症」と考えることもできます。また、感情表現が苦手なひとやストレスをため込みがちな性格のひとに多い病気というのも特徴のひとつです。

過敏性腸症候群と潰瘍性大腸炎の共通点

このふたつの病気は原因不明のほか、腹痛や下痢などの症状とストレスがかかることにより悪化するという部分でも共通しています。近年、「脳腸相関」における科学的な立証もあり、「腸は心の鏡」という考え方がいっそう重みを増してきました。言い換えると、脳の感知したストレスが刺激として腸に伝わり、腸管に炎症を引き起こすメカニズムが科学的に証明されてきたということです。

これが繰り返されると腸はどんどん敏感になり、ほんの少しのストレスで腹痛や下痢などの症状が起こってしまう悪循環が生まれます。この悪循環が気付かないうちに恐怖感として膨れ上がり、仕事や通学など日常生活へ影響を及ぼすことも。そのつらさは本人以外の周囲には理解されにくく、これもまた患者さんにとって大きな課題となるのです。

ちがいは、“便の状態”と“腸の炎症”があるかどうか

ふたつの病気の決定的なちがいは、便の状態と腸における炎症の有無です。

まず、潰瘍性大腸炎だと便に症状が出ます。過敏性腸症候群でも起こる下痢に加えて、血便や膿(うみ)などが混じったベタベタとした粘血便(ねんけつべん)が特徴的。この理由は、大腸の粘膜が炎症を起こすことで腸壁(腸管の内部にあたる粘膜)に潰瘍やびらん※が生じ、そこから出血しているためです。これらは大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)で、はっきりと確認することができます。

また、潰瘍性大腸炎ではごくまれに重症化すると命にかかわる危険性があり、国の「指定難病」※に定められています。もし、合併症を起こして病状が重くなってしまうと入院をともない点滴や手術が必要なケースも。対して、過敏性腸症候群では命にかかわるような危険性は少なく、通院で治療できるため入院を必要とすることもほとんどありません。

※びらん:皮膚や粘膜などが一部欠けてしまい,その内部の下部組織が露出した状態のことで「ただれ」とも言う。消化管粘膜の場合は粘膜内にとどまるものを“びらん”、それ以上に深くなっているものを“潰瘍”と呼んで区別する。

※指定難病:国内の患者数が一定の人数に達しない希少で難治性の疾患のうち、診断基準は確立されているが治療方法が確立されておらず、長期の療養を必要とするもの。治療に要する費用は国でおこなう医療費助成の対象となる。

過敏性腸症候群の治療は、“ストレスマネジメント”が軸

慢性的に腹痛をともない下痢や便秘をくり返す過敏性腸症候群で特徴的なのは、排便すると痛みが軽くなること。そして便の状態はひとそれぞれで異なり、「下痢型」や「便秘型」のほか、「混合型」や「分類不能型」など色々あります。

治療をおこなう前にまず、大腸カメラ検査などで腸に病気がかくれていないかどうかを調べることが大切です。これにより腸に異常がないことを確認したうえで、生活環境や食生活を整えながら、必要に応じて症状を和らげるような薬を飲みます。日常生活では睡眠や休養をしっかりと取りストレスを溜めないことと、刺激物や高脂肪の食べもの、アルコールを控えるようにしましょう。

また、この病気にかかるひとの多くがまじめな性格で、自分で気づかないうちに無理をしているひとが少なくありません。何度も症状をくり返すことで、悪循環とならないように整える必要があります。そのために症状を和らげる薬を使うほか、客観的に物事をとらえる考え方を身に付けてストレスを回避するような“ストレスマネジメント”も重要です。ストレスや刺激に対して簡単に反応しないような、“つよい腸”をつくることで症状をおさえていきましょう。

潰瘍性大腸炎の治療は、炎症を抑えて腸内環境を整えること

潰瘍性大腸炎の治療で重要なのは、大腸の粘膜に起こっている炎症を抑えること。これにはステロイドや過剰な免疫を抑える薬が有効です。

これらの治療法で効果のすくない難治性の場合には、腸内の免疫システムのうち過剰に働きすぎているTNFα(ティーエヌエフ・アルファ)という物質を選択的に阻害する抗体医薬品※で治療することも。

ただ、この病気は炎症を鎮める薬を飲むことで改善するひとが多いため、手術や入院を必要とするケースはほとんどありません。しかし、一時的に良くなっても心身的なストレスが加わることで再発をくり返すこともあり、日常的な心のケアを続けていくことが大切です。

※抗体医薬品:生体防御反応に関わるタンパク質の“抗体”が、疾患を起こしている分子に特異的に結合する性質を応用して遺伝子組換え技術等により作られた医薬品のこと。別名“免疫グロブリン製剤”とも呼び、がんや自己免疫疾患を対象に100品目を超える抗体医薬品が承認されている(2022年3月時点)

治療に先立って重要なのは、正しい“見極め”!

ふたつの病気は下痢と腹痛がつづいてストレスで症状が悪化するという点は共通しているものの、その治療方法は異なる部分もあるため、どちらの病気か見極めることも欠かせません。正しい診断がないまま、自己判断で下痢を止める薬を飲んでやり過ごしたり、おなかの痛みを抑える薬を飲みつづけたりしていませんか?気になる症状だけ抑える薬を使っていると、かえって病状を悪化させたり治療がむずかしくなったりすることがあります。

これらを見極めるには、腸の中をしっかりと確認することのできる大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)が有効です。便の異常に気付いたときにはその後の悪循環をまねかいためにも、早い段階で検査を受けましょう。

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