2026.03.31/最終更新日 2026.03.31

「健康長寿と腸内細菌」連載② 100歳超えても若い腸に!日常で実践したい7つの習慣

腸内細菌

健康長寿を左右する腸内細菌叢(さいきんそう)は、高齢になってからではなく、若いうちからの積み重ねによって構築されていきます。例えば適度な運動や、規則正しい食事と睡眠など、古くから健康によいと言われてきた習慣は腸内細菌にとっても有益です。これらに加え、炎症からの回復や免疫機能の維持、精神の安定、薬物の影響なども、腸内細菌と深い関係にあることが近年の研究で示されています。

連載第2回となる今回は、健康長寿を叶える腸内細菌を育むための「日常で実践したい7つの習慣」と、最新技術を駆使した「次世代プロバイオティクス」について紹介します。「長寿菌」が定着しやすい環境を整えるために、自分にあった腸活を見つけましょう。

健康長寿のために日常で実践できる7つの習慣

これまでの研究により、食生活の改善や適度な運動が腸の活性化に良い影響を与えることが知られています。腸内細菌を視野に入れ、健康長寿を成すための実践として、次の7つの項目について振り返ってみましょう。

①食生活の改善

健康長寿に特徴的なマイクロバイオーム※を育むには、毎日の食生活を見直すことが欠かせません。

厚生労働省は、健康寿命の延伸や健康格差の縮小を目指し、幅広い企業や団体と連携して「食生活改善普及運動」を展開しています。これは、店頭のリーフレットやPOPなどを通じて「まずは毎日、あと一皿ずつ野菜と果物をプラス」「おいしく減塩」といったキャッチコピーを掲げ、その大切さを消費者一人ひとりへ伝える活動です。

また、農林水産省は「日本型食生活」として、ごはんを主食に、魚や肉、野菜、海藻、豆類を組み合わせた多彩な副菜を添えるスタイルを推奨しています。日本ならではの食習慣と全国各地で生産される豊かな食材は、腸内細菌に多様なエサを供給し、より良い腸内環境を整えるために有効です。

こうした食事は、必ずしもすべてを手作りする必要はありません。主菜や副菜に、冷凍食品やレトルト食品を上手に活用するのも賢い選択です。まずは一汁三菜を基本に、旬の食材を一つ意識して取り入れることから始めてみましょう。

もっと具体的な食材選びや組み合わせを意識して取り組みたい人は、既存記事『腸内環境を整える食事、食材の選び方と効果的な組み合わせは?』なども参考にしてください。

※マイクロバイオーム:細菌を含め、ウイルスや真菌などすべての微生物を含む生態系のこと。「腸内マイクロバイオーム」については、連載第1回で解説しています。

②炎症からの回復

健康な高齢者は、炎症を抑える作用をもつ腸内細菌の保有率が高いと言われています。事実、100歳以上の高齢者は一般的な高齢者と比べて、酪酸を合成する経路に必要な遺伝子が1.4倍も高く、便中の酪酸濃度も45%高いことが明らかになりました。

これら酪酸をはじめとする短鎖脂肪酸は、免疫機能の調節や腸管バリアの維持に寄与するだけでなく、私たちの体内で抗炎症経路を活性化させるための重要な役割を担っています。

連載第1回で解説したように、慢性的な低度の炎症「インフラメイジング」は、腸内細菌の状態と老化スピードをつなぐ中心的なメカニズムです。実際、100歳以上の高齢者における炎症マーカー(IL-6、TNF-α、CRPなど)は、平均的な高齢者に比べて著しく低いことが分かっています。

したがって、健康長寿をかなえるためには、炎症からいち早く回復できる環境を整えることが重要です。そのためには、短鎖脂肪酸を豊富に作り出せる腸内細菌を定着させること。マイクロバイオームが持つ抗炎症作用を最大限に引き出すためにも、まずは食生活の見直しが欠かせません。

③運動、筋機能の維持

運動や筋機能の維持と聞くと、骨折やフレイル予防が思い浮かぶ一方で、腸内細菌とは結びつきにくい印象を持つ人も多いかもしれません。しかし、腸内細菌叢の乱れは骨格筋の代謝を変化させ、筋肉の萎縮(いしゅく)を促進する可能性があることが判明しつつあります。

つい最近、短期身体能力評価(SPPB)において、握力などの指標が特定の腸内細菌(ローズブリア・ホミニス、ユーバクテリウム・レクターレなど)の存在量と正の相関を示すことが研究で明らかになりました。

いつまでも若々しい身体能力を保つには、日々の運動に加え、筋肉の材料となるタンパク質やアミノ酸をしっかりと補給すること。そして何より、腸内細菌の栄養源となる食物繊維を十分に摂取する食習慣が欠かせません。

④精神の安定と脳機能の維持

近年、「脳腸相関」※という概念が浸透しつつあり、精神状態の安定が腸内環境を守り、逆に腸内の環境が脳の健康を左右することが広く知られるようになってきました。実際の研究でも、腸内マイクロバイオームが神経認知機能に深く関与していることが示されています。

たとえば、認知症の人と認知症ではない人で腸内細菌を比較すると、その内訳には顕著な差が見られます。驚くべきことに、軽度認知障害(もの忘れ)の段階から、すでに腸内細菌叢の変化は始まっているのです。具体的には、認知症の人の腸内では、炎症を引き起こす病原性の細菌が増加する一方で、炎症を抑える有益な菌が減少する傾向にあります。

さらに深刻なのは、加齢やストレスによって腸内環境が乱れると、腸のバリア機能だけでなく、脳を守る「血液脳関門(BBB)」の機能までもが低下してしまう点です。腸から漏れ出した細菌性の神経毒素(LPSなど)が脳内へ侵入すると、脳内の免疫細胞が過剰に活性化し、慢性的な神経炎症や異常なタンパク質の凝集を引き起こします。これが、アルツハイマー病やパーキンソン病といった加齢関連疾患のリスクを高める大きな要因に。

このように、ストレスを上手に発散して感情を穏やかに保つことは、腸内細菌を介した炎症から脳を守り、健康長寿を全うするために重要です。

※「脳腸相関」については、既存記事『ブレインフォグの原因「腸内細菌の乱れ」と脳腸相関とは?』で詳しく解説しています。

⑤免疫機能の維持

一般的な高齢者は免疫力が低下しやすく、多くの病原性微生物に対して感染リスクの高い状態にあります。その最前線で戦っているのが、口腔や鼻腔、消化器、呼吸器などへと続く、バスケットボールコート約1面分にも相当する広大な「粘膜面」の免疫機能です。ここで主役を担う「分泌型IgA(secretory IgA)」の産生には、腸内細菌が深く関与していることが分かっています※。

粘膜面に存在するリンパ組織が中心となって誘導された分泌型IgAは、病原体が粘膜に付着するのを阻止したり、毒素や酵素を中和したりすることで、私たちを感染から守ります。しかし、これを正常に誘導させるには、一過性の炎症応答による「引き金」が必要です。

高齢者の場合、慢性的な炎症状態である「インフラメイジング」がこの引き金を邪魔しているため、分泌型IgAをスムーズに誘導できません。

事実、老化によるT細胞の機能低下に加え、間接的に抗体産生が減少してしまうことが研究で示されています。

ここで注目したいのは、宿主の細胞は老化する一方で、腸内細菌そのものは老化しないという現実です。つまり、長年の生活習慣による便秘といった生理的変化や病気などが元となって、本来老化しないはずの腸内細菌叢が好ましくない状態へ変化している可能性が高いといえます。

したがって、健康長寿を見据えた免疫機能の維持には、若いうちからインフラメイジングや粘膜免疫応答の低下を防ぐ、“腸活”と感染予防対策を積み重ねていくことが鍵となるでしょう。

※腸内細菌と免疫機能の関係については、既存記事『腸管バリアのしくみと機能。食事と腸内細菌が大きく関与!』で詳しく解説しています。

⑥概日リズムの維持

私たちヒトが朝起きて昼に活動し、夜に眠るように、腸内の微生物たちも体内時計である「概日(がいじつ)リズム」を保って活動しています。なかでも、食物摂取のタイミングはとくに重要です。微生物叢は、宿主の食事に対する代謝反応に連動してその均衡を保っているため、不規則な時間に食事をとると、宿主自身の体内時計だけでなくマイクロバイオームのリズムまで崩れる原因となります。

実際に、不規則な食生活が腸内細菌叢を乱し、糖尿病などの代謝性疾患リスクを高め、結果として健康寿命を短くするといった研究報告も。

また、睡眠と腸内微生物との関係も見逃せません。心地よい眠りや精神の安定に欠かせないセロトニンの濃度は、日中の活動中にピークを迎える傾向があります。セロトニンは、体内では約90%が消化管に存在し、主に小腸の細胞(クロム新和性細胞)で産生されますが、その産生や代謝に関わっているのが腸内細菌です。さらに、睡眠を調節するメラトニンも、大部分は脳の松果体で合成されるものの、一部は腸内でのアミノ酸代謝を通じて供給される可能性があります。

つまり、マイクロバイオームはセロトニンやメラトニンなどの濃度変化も介して、私たちの概日リズムに影響を与えているのです。

規則正しい時間に食事や睡眠をとることは、共存する腸内微生物たちと一緒にリズムを刻み、健康寿命を目指すための一番シンプルな取り組みと言えるでしょう。

⑦過剰な薬物治療を減らす

多くの薬を併用する「多剤併用(ポリファーマシー)」は、腸内細菌叢の多様性を著しく低下させることが問題となっています。過剰な薬の使用は、唾液の分泌を抑えて消化酵素を減少させたり、消化管の動きを鈍らせたりする可能性も。その結果、食欲不振や栄養の吸収不良が起こると、有益な腸内細菌が減少して腸のバリア機能が弱まり、全身的な炎症を引き起こしやすい環境に陥りやすくなります。

一方で、薬のすべてが必ずしも悪影響を及ぼすわけではありません。たとえば、一部の糖尿病治療薬(一般名:メトホルミン)は、腸内細菌叢を介して多面的な効果を発揮する可能性が注目されています。マウスを用いた研究では、メトホルミンが特定の遺伝子発現などを抑えることで腸内の粘液(ムチン)産生を促進し、最終的に脳の認知機能によい影響を与えることが示されました。

こうした薬ごとの有益な研究報告が期待される一方で、大切なのは「本当に必要な薬を最適な量で用いること」です。一般的な乳酸菌製剤やサプリメントは医薬品と異なり、たった数回の摂取で劇的な効果が見られるということはほとんどありません。しかし、インフラメイジングの抑制から、筋肉、精神、脳、免疫、そして概日リズムといった健康長寿の根幹を支えているのは、他ならぬ腸内細菌たちです。

もしも、「なんとなく飲んでおいた方が安心だから」という薬があれば、必ず医師に相談の上で、自身の身体にとって必要かどうか向き合ってみてはいかがでしょうか。

「次世代プロバイオティクス」とは

現代において、腸内環境を整えるアプローチは大きな進化を遂げています。たとえば、遺伝子工学を駆使した「遺伝子組み換えプロバイオティクス」が次々と開発されているのも、その目覚ましい進化の一つといえるでしょう。

2017年には、従来のプロバイオティクスなどの分類※に加え、新たに「次世代プロバイオティクス(NGPs)」という概念が提唱されました。これは、メタボロミクス※や次世代シーケンサーといった最新の解析技術により、特定の健康効果を持つ細菌を直接特定できるようになったことで生まれた分類です。

従来のプロバイオティクスと異なり、歴史的な食経験の有無を問いません。科学的分析に基づいて、適量を摂取するとヒトの健康によい影響を与えることが証明された生きた細菌を指します。また、腸内への定着しやすさや外部微生物への感受性など、より包括的な分析に基づいて特定される点も、これまでにない大きな特徴です。

具体的な細菌としては、アッカーマンシア・ムシニフィラ、ファーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ、ルミノコッカス・ブロミイなどが挙げられます。なかでもファーカリバクテリウム・プラウスニッツィイは、加齢に伴う身体の変性を軽減できるとして注目されています。実際、アルツハイマー病モデルのマウスを用いた研究では、この菌の投与によって認知障害が改善されることが示されました。

これらはまだ研究段階ではあるものの、近い将来、こうした最新知見に基づいたサプリメントや治療法が私たちの健康長寿を支える実用的な選択肢となっていくのかもしれません。

※プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクスについては既存記事『腸内環境を整える食事、食材の選び方と効果的な組み合わせは?』で詳しく解説しています。

※メタボロミクス:代謝物を網羅的に測定して、生体の状態や機能を評価する解析手法。

まとめ

専門家の間では、腸内細菌叢が健康長寿を予測する潜在的な指標となる可能性に大きな期待が寄せられています。しかし、健康長寿への道を確かなものにするためには、まずは自身自身の腸内細菌の内訳を知ることが重要です。

近年では、「腸内フローラ検査」によって自身の細菌叢の状態を調べることもできるようになりました。また、より効率的に腸内環境を整えたい場合には、自由診療として提供されている「腸内洗浄と乳酸菌注入療法」といった専門的な選択肢も身近になりつつあります。
テレビや雑誌で話題の「長寿菌」や、最新技術を駆使した「次世代プロバイオティクス」の登場により、健康長寿へのアプローチは日々進化しています。すぐに始められる「日常で実践したい7つの習慣」をベースに、自分にぴったりの腸活を無理なく取り入れ、理想とする未来の健康長寿を目指して取り組みましょう。

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