女性医師による大腸検査や鎮静剤を使った痛くない内視鏡(カメラ)検査など、いわゆる内視鏡クリニックを選ぶときに重視するポイントは様々です。では、健康診断での再検査やおなかの不調があって検査を受けたいとき、どのようにこれを探せばよいでしょうか?最近ではおなかの健康から全身を整え、脳腸皮膚相関にも配慮した診療サービスを提供するところも増えてきました。単に検査を受けるための場所ではなく、長く“かかりつけ”にしたいと思えるような内視鏡クリニックを選ぶときの注意点やポイントについて紹介します。
クリニックや病院を検索するときの注意点
内視鏡検査や消化器科に限らず新しく受診しようとするクリニック(診療所)や病院を探すとき、どのような手段で調べていますか?おそらく、若い人や働き盛りの人ではスマートフォンやパソコンを使って検索する人がほとんどでしょう。昔と違って雑誌や新聞、バスや電車などの広告を見て受診を決める人は少ないかもしれません。
一般に、医療機関の検索サイトでは幾つかのキーワードを選ぶと、それにあった条件のところが検出される仕組みになっています。このような検索サイトは幾つも存在し、民間が運営するサイトでは健康に関するコラムや注目度の高い情報も盛り込まれているなど、検索に留まらず様々なメリットも。ただし、その運営には少なからず費用も必要で、掲載される医療機関がそれを負担している場合もあります。つまり、検索サイト上で上位にあるからといって、安心できる医療機関とは限らないということを念頭におくことが大切です。
いちばん安全なのは厚生労働省が運営する情報支援サービス「医療情報ネット」(医療情報提供制度) で、都道府県の行政機関が各医療機関から年に一度、決まった項目について申告される医療機能情報をもとに提供しているサイトです。ただし、リアルタイムで個々に編集することは難しいため、ここで調べたあとに各クリニックの公式サイトで最新の情報を確認するようにしましょう。
内視鏡クリニックを探すときのキーワード
検索サイトで調べる場合、内視鏡クリニックでは立地に“内視鏡”や“消化器”といったキーワードを加えて検索すればおおよそ絞れます。さらに民間の検索サイトでは、「内視鏡専門医」など独自に細かい検索項目が設定されているところも。
ここで、「内視鏡専門医」とは一般社団法人 日本消化器内視鏡学会が認定する、消化器内視鏡の診療において豊富な学識と経験を有する医師のことです。この分野で5年以上に渡って研修し、所定の技能や経験を積むことで認定されます。対して、「内視鏡指導医」というのはこの専門医を育成する立場にあり、消化器内視鏡の診療を専門とするだけでなく研究活動も行っている医師のことです。ただ、指導医は専門医に比べて人数も少なく、一般にほとんど周知されていないため、専門医に含まれる形で掲載されていることもあります。
もっと細かい条件で選びたい人は、次に挙げるようなキーワードも加えて検索してみましょう。
【医療機関を探すときのキーワード例】 ・日帰りで大腸ポリープ切除が可能 ・下剤を飲まない大腸内視鏡検査 ・鎮静剤を使用して眠ったまま受けられる ・土日も診療 ・女性(または男性)医師 ・オンライン(または電話)診療 ・ネット予約受付 ・駐車場あり ・クレジットカード利用 ・車椅子配慮
実は盲点!内視鏡クリニック選びのポイント
内視鏡検査を扱うクリニックの公式サイトでは、「痛くない」「麻酔」「鎮静剤」「下剤の種類が豊富」というような単語を多く見かけます。加えて、検査の実績件数やほかの大きな病院との連携について書き記すところも。もちろん、これらの情報は患者さんにとってとても関心の高い部分です。
ただ、意外な部分で内視鏡検査を終えた後に総じて、「つらかった」と感じてしまう人もいるかもしれません。それは、検査以外で起こる様々なストレスが原因で引き起こされている可能性もあります。例えば、次に挙げるような状況ではストレスを感じる人もいるでしょう。もし、「自分はストレスに感じそうだ」と思う人はこれらも選ぶときの参考にしてください。
【ストレスとなり得る状況】※ ・待合室の雰囲気がリラックス出来ない ・検査前の処置や検査中に使うトイレがほかの患者さんと共有 ・専用の洗面台がないために身だしなみの確認が困難 ・検査後に安静を保つための専用スペースがない ・検査後の結果説明のために対面での受診が必要 ・大腸にポリープがあっても、その場で切除してくれない ※ストレスの感じ方には個人差があります。
内視鏡検査「痛い」「苦しい」の理由とは?
大腸検査(下部消化管内視鏡検査)では、大きく分けて3つの「痛い」と「苦しい」があります。1つ目は、検査前に下剤を飲んで頻回の排便が必要だという苦しさです。2つ目は大腸カメラを腸の中へ挿入していくときに、腸が伸びたりねじれたりすることで感じる痛み。そして3つ目は、腸の内部を観察するために入れる空気が原因で、おなかが張るために生じる苦痛です。
これらのうち、挿入時の痛みは検査を行う医師の技術と経験値に大きく左右されます。また、3つ目は空気に変えて二酸化炭素を用いることで、検査後のおなかの張りを軽減することが可能です。
2つの内視鏡検査はどちらも、鎮静剤を使ってウトウトと眠ったような状態で楽に受けることが出来ます。ただし、その場合は検査後に車の運転や、高所など危険を伴う作業をおこなうことは出来ません。
内視鏡クリニックは検査のときしか受診できない?
内視鏡クリニックは、“検査を受けるときだけの施設”という印象を持っている人もいるかもしれません。しかし、検査で異常が見つからなくても何らかの不調があれば、治療したいと思うのが必然的。だからこそ、内視鏡クリニックを選ぶには検査だけでなく、そのあとの治療や通院を見据えて自分が通いたいと思うところを探すことが大切です。
例えばごく最近、分かってきたばかりの病気に関する知識を兼ね備えた医師がいるかどうかもポイントになります。具体的には、内視鏡で何も異常が見つからないのに胃もたれやみぞおちの痛みを呈するようなFD(機能性ディスペプシア)や、IBS(過敏性腸症候群)とよく似た症状の出るSIBO(シーボ、小腸内細菌異常増殖)など。これらは消化器系の学会で活動したり論文発表をおこなったりして、学びを続ける医師のもとで治療するとよいでしょう。
「プラスα」のサービス提供を求める人へ
近年の“腸活ブーム”もあって、内視鏡クリニックでは腸内洗浄や腸内フローラ検査などの自由診療を取り入れるところも増えてきました。さらに、脳腸皮膚相関※を考えるところでは、その人の腸内環境を診察した上で推奨される美容診療について提案してくれるクリニックも。
昨今の免疫に関する意識の高まりで、腸の担う免疫機能が身体全体の約7割を占めるということが広く周知されつつあります。これからますます、おなかから全身の健康を整えるという認識が一般的になっていくことでしょう。
現代における“内視鏡クリニック選び”は、健康増進やエイジングケアに対する個別の取り組み方について合理的に提案してくれる医師を探すきっかけとなっていくのかもしれません。
※脳腸皮膚相関(のうちょうひふそうかん):脳の受けたストレスが腸を介して皮膚に伝達される経路と、その逆の経路で腸が受けたストレスが皮膚を介して脳に伝達されるという、脳-腸-皮膚の機能的な相互作用のこと。